16のとき、初めて買ったバイクはMB-5という、ホンダの2ストロークの原付だった。約40年前だ。当時は原付でもスポーツタイプのラインナップが結構あって、リミッターも無く、最高速は90Km弱は出た。その後のモデル(MBXとかRZ、RGγ、AR)では、さらにパワーアップが図られ100Km超ものスピードを出すことができた。つけ加えておくと、この頃原付はヘルメット装着の義務は無く、ノーヘルでも違反にならなかった。100Km出るバイクでノーヘルって、今じゃ自殺行為だな・・・ユルい時代だった。
出典: https://car.motor-fan.jp/article/10016465
そんな80年代のバイクが熱い時代、2ストロークのバイクは小さい排気量でもパワーがあって、ヤマハRZ350は「ナナハン・キラー」なんて呼ばれていた。
出典:https://4-mini.net/custom/oldbike-yamaha-rz350
甲高いエクゾースト・サウンドとパワーバンドに入った途端に爆発的な加速をするのが2ストロークバイクの魅力。ただし、オイルをまき散らして走る2ストバイクの後ろを走るとジャケットやヘルメットに黒いオイルのシミができるので、2ストバイクの後ろを走るときは距離を空けるか、追い抜くかしたもんだ。特に知人が乗っていたホンダのMVX250(V型3気筒エンジン)はオイルの飛散がひどくて、彼が自分の前を走るとオイルまみれになってエラいい目にあったのをよく覚えている。
それから20年後・・・2000年から厳しい排ガス規制が導入されることになり、前年の1999年にはほとんどの2ストロークバイクはその規制をクリアできずに生産中止に追い込まれた。
その後もさらに厳しい規制が発令され、2008年頃に2ストロークエンジンのバイクは完全に消滅した。
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この先、さらに規制が強化されるのは確実で、あと何年かすればガソリン燃やして走るバイクやクルマは公道を走れなくなるかも知れない。
日本のバイク4大メーカーがそんな先行きを案じたのか、こんなニュースが流れてきた。
電動2輪車の普及に向けメーカー各社が動き出した。ヤマハ発動機は2050年に2輪車の90%を電動化する方針を表明。ホンダは配達などのビジネス用途に続き、24年までに個人向け3車種を発売する方針で、大型の電動2輪車の投入も計画している。国内主要4社は電動2輪車向け交換式電池の標準化に合意した。脱炭素の達成に向け、電動化の流れは2輪車にも及んでおり、各社は対応を急いでいる。(江上佑美子)
ヤマハ発動機は電動2輪車のプラットホーム開発に取り組む。丸山平二取締役上席執行役員技術・研究本部長は「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現を目指す上でソリューションを創出することは、当社にとってチャレンジでありチャンス」と意気込む。
ホンダは24年までに原付き一種、同二種クラスの電動2輪車3車種を投入する考えだ。「多様なニーズに応えるべく、ビジネス領域に加え、付加価値が高い領域の商品を含めたラインアップを目指す」(三部敏宏社長)。
大型タイプに強みを持つ川崎重工業も電動や、エンジンとモーターを併用するハイブリッド型の2輪車に関して「技術開発のめどは立てており、商品化に向けた検討を進めている」(橋本康彦社長)と意欲を見せる。スズキも26年3月期までの中期経営計画で、電動2輪車を投入する方針を示している。
電動2輪車の普及において、商品拡充とともにカギを握るのが電池だ。ホンダ、川崎重工業、ヤマハ発動機、スズキは3月、電池とその交換システムの標準化に合意した。日本自動車工業会(自工会)の日高祥博副会長(ヤマハ発動機社長)は「4輪車と比べて2輪車は台数や、1台に積める電池の量が少ない。各社が個別に電池を調達するのは難しい」と背景を説明する。「グローバル標準」を目指し、欧州メーカーとの連携も進める。
矢野経済研究所の調査によると、世界で2輪車の電動化比率は20年の4・8%から、30年には最大約20%に達する。日高自工会副会長は「2輪車は国内4社が世界市場シェアの約半分を持つ。カーボンニュートラルで地殻変動が起こる可能性がある」とした上で、カーボンニュートラル対応について「日本が負けることがないとの気概で頑張っている」と強調する。
政策の後押しもある。東京都は35年までに都内で販売する2輪車の新車を、全て非ガソリン車にする方針を示している。21年度を「非ガソリン化元年」と位置付け、6月には電動バイクの購入費補助を拡充した。
自工会の統計によると、国内の2輪車の販売台数は40年前の2割以下だ。いち早く電動化の技術を確立し、特に2輪車の需要拡大が期待できる新興国への普及に成功したメーカーが生き残りに成功するといえる。一方、充電ステーションの不足や災害時の対応など、普及に向けた課題は多い。
ホンダも「電動化だけでなく、ガソリンエンジンの燃料改善やバイオ燃料の活用にも取り組む」(三部社長)としている。
日刊工業新聞2021年8月19日
日本のバイクメーカー4社も、電動化の肝となるバッテリーを共通化してコストを下げて普及をめざすようだ。
記事の中で「東京都は35年までに都内で販売する2輪車の新車を、全て非ガソリン車にする方針を示している。21年度を「非ガソリン化元年」と位置付け、6月には電動バイクの購入費補助を拡充した」とある。これが本当に実現されれることになれば、東京ではあと10数年でガソリンエンジンのバイクが買えなくなる。
もうカウントダウンは始まっている。
カワサキは「二輪車のカーボンニュートラル(脱炭素)に向けて2035年までに先進国向け主要機種の電動化を完了させるとともに、水素を燃料としたエンジンの開発にも取り組んでいく方針を明らかにした」と、脱炭素へのロードマップを示した。
もう、ZもWもNinjaも消えていく運命なのか・・・なんか受け入れ難い。
海の向こうでは、ハーレーも「ザ・アメリカン」みたいなふんぞり返って爆音響かせながら走るバイク作りから、電動バイクに舵を切った。
LiveWire(ライブ・ワイヤー)
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もう近い将来、自動運転技術が確立され、事故や法令違反を起こしまくる人間が運転するクルマは街を走れなくなるかもしれない。そしてクルマは所有からシェアする乗り物になる。これは、誰がどう言おうが既定路線だ。
二輪車については絶望的だ。単体で自立することの出来ない2輪は、その存続さえ危うい。
もしかしたら、サーキットのような決められた施設内でしかバイクに乗ることができなくなるかもしれない。それも電動バイクのみ。
環境問題は深刻だ。化石燃料を燃やして二酸化炭素を排出する、ガソリンエンジンのバイクやクルマをいつまでも野放しに走らせていくわけにはいかないのも十分承知している。
でも・・・
やっぱりガソリンで走るバイクが好きだ。
シングルやツイン、マルチに直列やV型、水平対向など様々な個性的なエンジンのメカニカルノイズと排気音。
ガソリンやオイルの匂い。
エンジンをかけたときの体に伝わる振動。
全てが五感に訴えかけてくるバイクはまるで生き物のよう。
そしてひとたび跨がり走り出せば、何年乗っても理想に行き着くことのない自分のライディングテクニックに腹を立て(だから飽きない)、それでも一瞬ダイナミックにコーナーを駆け抜けたときの爽快感に心が震える。
旅の相棒としても一番自分に寄り添ってくれる仲間のような存在。それが消えていくのか・・・
あと15年ぐらいしか楽しめないのか。
ただ、個人的には今まで40年近くバイクに乗り続けてこられただけでも幸せだったのかもしれない。
そういえば、ブロガーとして交流のあるNobさんが、CB1100のファイナルエディションを注文したと記事をアップしていた。新車で買える空冷4発のバイクもこれが最後だと思って思い切って注文したらしい(納車はなんと1年後なんだって)。個人的にも空冷4気筒のエンジンは、エンジンのなかでも一番美しい造形をしていると思うし音もいい。オートバイによく似合うエンジンだ。もちろんバーチカルツインのエンジンも個性的で素晴らしのは言うまでもないけど(笑)。もう空冷では規制をクリアすることは難しいく、クリアできたとしてもそのコストが見合わないので、空冷エンジンは消えていく運命のようだ。
この先、空冷だけでなくガソリンで動くバイクやクルマを新車で欲しいと思っても手に入れることはできなくなる。
そう思うとバーチカルツインエンジンのボンネビルT120もいいが、無い物ねだりで4気筒のエンジンのSSもなくなってしまう前に買っちゃおうかな、なんて魔が差しそうだ・・・(やっぱりCBR600RRでサーキットを走ってみたい)
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そう遠くない未来、Motorcycleのサウンドは、この世から消える・・・
その時が、自分にとってバイクを降りるときになるんだろう。
それまで心身ともに元気でいよう。タバコもお酒も止めて(前回の記事参照)、早寝早起き、食事にも気をつかう(古い友人と会うときとか、そういう機会はお酒を飲むと思うけど・・・)。
思ったほど時間は残されていない。早く経済的自由を手に入れてフルタイムの仕事を引退し、時にはひとりで、時にはパートナーや仲間とバイクやBRZ(ガソリンエンジンのスポーツカーも絶滅危惧種だ)で旅をしたいな。
そんな人生後半戦の生き方が理想だ。