2021年。6月最初の日曜日。大安吉日。
トライアンフのディーラーから、この日以降だったらいつでも納車できますよと連絡をもらった。
季節は梅雨。できれば雨の日の納車は避けたい。天気予報とにらめっこの日が続く。どうも、あまり天気はよろしくないみたいだ。でも、日曜日だし、大安でお日柄もよろしい。
事前の予報では、曇りときどき雨。午前中から昼頃にかけて雨が降る予報。その後は曇りみたいだ。
「もし、終日天気がよくなければ、別の日にずらしますが、とりあえずこの日に伺います」と担当の営業マンに返事をする。
「当日は、どのようにいらっしゃいますか?」
「そうですね。電車とバスを使ってお邪魔しようと思います」
「それなら、最寄りの駅までお迎えにあがりますので、到着時間がわかったら電話ください」
それは有り難い。駅からディーラーまで2キロちょっとある。歩けない距離ではない。普段、会社のお昼休みに散歩するぐらいの距離だ。だから納車の喜びを噛みしめながら歩いていくつもりでいた。
でも助かった(笑)
近所のバイク屋なら、友だちか家族に頼んで乗せてもらってもいいが、さすがにお隣の愛知県で片道60Kmもあると頼みにくい。もし、送ってもらっても、実費にごはんご馳走したり、友だちなら菓子折の一つも渡すのが礼儀だ。
だったら、ひとりでバスや電車を乗り継いで行った方が気が楽だし、帰りに天気がよければひとっ走りできる。
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バッグパックにライディングジャケットやグローブを詰め込み、メットは「MOMO design」を手に取った。ボンネビルにはこいつが似合いそうだ。MOMOのメットを布袋に入れてバックパックを背負い近所のバス停まで歩き出す。するとポツポツと雨が降り出した。
ただ、それほど本降りでもない。午後には晴れる予報に変わっていた。頼むぞ、天気予報!
コロナでほとんど出張に行くこともなくなって、久しぶりの電車だ。券売機でSuicaの残高を確認すると、ちょうどディーラーの最寄り駅まで行けるだけの残金が残っていた。
岐阜県民や愛知県民の足「名鉄電車」。横浜から越してきてこちらの生活が長くなると、出張で東京方面から帰ってきて名古屋で赤い電車を見るとホッとする自分がいる。昔は逆だった。東京や横浜方面に行くときが「(地元へ)帰る」感覚で、名古屋方面に戻るときが「(名古屋に)出かける」感覚だった。しかし、もうずいぶん前にその感覚は逆転した。
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ディーラーに着くと、彼はすでに用意され、新しいオーナー(もちろん自分)に引き渡されるのを待っていた。
1年越しの恋が実った瞬間だ。
‧˚₊*̥(∗*⁰͈꒨⁰͈)‧˚₊*̥オォ~ カッコイイ・・・
これまで、何台もバイクを乗り継いできたが、新車でバイク買うのはSRに続いて2台目。やはり新車の輝きは違うね。
オプションで頼んだ、メータースクリーンが取り付けられ、
もう、必需品となったトップケースの台座も頼んでおいた。一度トップケースの便利さを知ってしまうと、スタイルがどうとか関係なくなる。純正オプションだがGIVIのOEMなので、手持ちのトップケースも取り付けられる。あとETCも取り付けてもらった。
取扱の説明を受け、車検証や保証書などを受け取る。
さすが、高級外車のトライアンフだけあって、車検証入れもしっかりとした作りのブリーフケースだ。
トライアンフのオーナーだけが付けることの出来るキーホルダー。2つあるうちの小さい方はノベルティだ。おまけに付けてくれた。
これらの書類を背負って帰れるように、リュックまで付いてくる。なかなか本格的でしっかりしたリュックだ。日帰りの低山登山ぐらいだったら使えそう。ちなみに、このリュックは2020年モデルまでしか付かないそうだ。2021年の新型にこのサービスはない。ちょっとずつコストが削られていくと担当者が嘆いていた。新しい2021年モデルは、よく見るとメッキパーツが省略されたりしていてコストダウンのあとが見え隠れする。売れ残っていた(?!)2020年モデルは「買い」だったと思う。
ボンネビルに合うグローブがなかったので、ユニオンジャック柄の革のグローブも購入した。 なかなかネットでも売っていないトライアンフの正規品だ。
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さあ、走りだそう!
雨はあがって、日差しも出てきた。路面もほぼドライ。さすが大安吉日。
エンジンはセルフスターターだ。キルスイッチ兼用のスタータースイッチを押すだけでエンジンがかかる! 当たり前と思われるかもしれないが、SRからの乗り換えで最初に感激するポイント(笑)
T120のサウンドは低音で太い。さすが1200cc。実は前回試乗したのが900ccのT100だったので、T120は初体験。足つきはT100とそれほど変わらない。良好だ。不安はない。車重も244㎏と重たいが、重心が低く安定していて意外と重さは感じない。
スタッフに見送られ、1速にギヤを入れ、そーっとクラッチをつないでいく。
「低速トルクの塊」と表現したらいいのだろうか? とにかくエンジンが力強い。このエンジン3100回転で105Nmの最大トルクを発生する。SRが5500回転で29Nmであるから、2000回転以上低い回転数で3倍以上のトルクを発生する。その違いは乗ってすぐに体感できる。
国道に出ると、3000回転ぐらいまで回してみる。いや、もうメットのなかで顔がにやけてしまうよ。SRのようにダイレクトに振動が伝わってくることはないが、それでいてバーチカルツインの心地よい鼓動とサウンドはちゃんと伝わってくる。こりゃたまらんわ。
高速に入ると車体の剛性感の高さを感じる。SRの時は高速で100㎞も出すと必死だったのに、まるで60㎞ぐらいで流している感覚。すべてが上質だ。イメージしていた通りの乗り味。
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少し遠回りして峠道を走る。
ハンドリングはややマッタリしていて、コーナーではムリに曲げようとせずに、車体に任せてリーンウィズで倒しこんでいけば、綺麗に弧を描いて回る感じだ。ただ誤算だったのは、バンク角が浅いこと。ちょっとしたコーナーでリヤに荷重をかけてサスを縮ませてタイヤを路面に押し付けると簡単にステップを擦ってしまう。プリロードが一番抜いてある状態なので、1段締め上げた方がいいかもしれないが、まだ慣らしなので、しばらくはこの状態でサスも動かしてアタリがつくまで待とう。
適当な駐車場にバドを止めその姿をまじまじと眺める。タンクのコロッシレッドとスノードニアのツートーンカラーは鮮やかでよく映える。銀色のコーチラインは、職人による手書き。また、“T”が大きい伝統的なTRIUMPHロゴが市販車に採用されるのは、およそ30年ぶりとのことだそうだ。
コーチラインを描いた職人さんのサインがタンクの隅にさりげなく入っている。にくい演出だね。
メーターはオーソドックスな2眼だが、液晶部分はオドやA・B2つのトリップにシフトインジケーターや平均燃費、時計、燃料計、走行可能距離数など意外と多機能だ。
100㎞ぐらい走って帰宅する。
T120のインプレッションは、雑誌やネット記事などで多数報告されているが、慣らしが終わってもう少し走ったところで、改めて自分なりのインプレッション記事をアップしたいと思う。
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TRIUMPH BONNEVILLE T120 Bud Ekins Special Edition(2020)
トライアンフ ボンネビルT120 バド・イーキンス スペシャルエディション
(特別仕様装備品)
ハンドペイントコーチライン
クラシックTRIUMPHロゴ
モンザキャップ(モンザスタイル フリップアップキャップ)
マットガード(シャーマンオークス-カリフォルニアロゴ付)
LEDインジケーター
グリップ(ダイヤモンド ローレットテクスチャーグリップ)
バーエンドミラー
専用ブラックエンジンバッジ