6月の初めに納車されたボンネビルT120バド・イーキンス スペシャルエディション。先日の「慣らし完了ツーリング」で走行距離も1200Kmを超え、初回点検でオイルとオイルフィルターも交換し、ようやく気兼ねなくエンジンを回せるようになった。
ここいらで、まずはボンネビルT120のファーストインプレッションをまとめてみたい。
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スタイル
前にも書いたことがあるが、ブルさんのバイクの好みは「アナログの2眼メーターに股の間に鉄のタンクがあって、カウルがなくエンジンがむき出しで昔ながらのバイクらしいスタイル」だ。
ボンネビルT120は、そんな好みのドツボにハマる、まるで自分の理想を絵に描いたようなスタイル。ブリティッシュスタイルの正統派。見ているだけでうっとりする。トライアンフは国産にはない細かいところにもこだわりがあって、燃料供給装置は電子制御のインジェクションだが、まるで昔のキャブレターのようなデザインになっている。また、水冷エンジンなのに、空冷のように深く刻まれたフィンもいい。トライアンフとしても長い歴史のあるボンネビルに対するリスペクトなのだろう。
乗車ポジションと足つき
やっぱりね。自分の基本的な用途はツーリングだし、もう高回転までガンガン回して走るようなこともあまりない。ハンドルが低くて肩や腕、腰に負担のかかるポジションのスポーツ系バイクは正直しんどい(憧れるけど・・・)。
一方、高速道路や長距離ツーリングではカウルやスクリーンがあるバイクが楽だとも思う。一時はアドベンチャータイプのバイクに気持ちが傾いたりした。しかし、一度試乗してみたら逆によくできすぎていて、快適すぎるのだ。バイクは多少のウィークポイントを我慢して乗っているのが楽しい気がする(ライダーはMっ気のある人が多い?)。
ボンネビルT120に乗り換える前、SR400に乗っていて思ったのは、背筋を伸ばし全身に風を受け、エンジンの鼓動ー激しい振動との戦いも言うーを感じながら風景を楽しむような乗り方ができるバイクが自分は好きなのだということ。ただしSRではパワーが足りなすぎて、ちょっと物足りないと感じていたのも事実。そんな状況といろんな条件が重なってトライアンフのボンネビルT120バド・イーキンススペシャルエディションへの乗り換えにつながった。
詳しい経過は ↓ をご参照ください。
【バイク】-トライアンフボンネビルT120 カテゴリーの記事一覧 - ブルパワー.com
実はハーレーのスポーツスター883Nのスタイルも好きでちょっと考えたことがある。あの横から見るVツインのエンジンはメカメカしくてそれ自体がデザインとして主張してカッコイイ。
しかし、残念ながら単眼のメーターでアップライトなポジションと車高の低さはコーナーリングの楽しみがスポイルされそうだ。タンク容量も少なく、長距離ツーリングには向かない。自分が求めるものと少し違う気がしたので候補からは外れた。
そういう意味でボンネビルT120の乗車ポジションは、本当にニュートラルだ。腕を伸ばしたところにハンドルがあり、ステップの位置も足を「スーッ」と下ろした位置にある。膝の曲がりもちょうど直角になるような感じで、自然な乗車姿勢だ。以前に乗っていたZRX1200にはバックステップを装着していたが、膝の曲げがきつく長距離になると辛かった。
ボンネビルT120のシート高は790ミリとそれほど高いわけでもなく、自分の身長(167Cm)でも、両足を着いて踵がやや浮くぐらい。重量は244Kgと重たい部類だが、バランスがいいのかそれほど重たいとは感じない。逆に安定感を感じる。見た目は大柄に見えるが、跨がってしまえば、自然なポジションも相まって、意外とコンパクトでとても1200ccのバイクに乗っているような感じはしない。
積載性について
ツーリング用途をメインとして考えていたので、積載性は大事だ。ボンネビルの車両自体に積載するスペースはほぼない。シート下にもバッテリーやECUなどがぎっしり詰め込まれ、ETCが何とか隙間に収まる程度。車載工具はヘックスレンチ1本という潔さ(笑)
ただ、タンデムシートはそこそこの大きさで、バッグなどを載せるには不足はないし、自分はオプションでトップケースの台座を付けた。これはGIVIのOEMで、自分が持っている38リットルと46リットルのトップケースをそのまま付けることができる。この2つを積載する量に併せて使い分けている。
SRの時はさすがに46リットルのトップケースは大きすぎて似合わなかったが、ボンネビルT120はこのくらいの大きさでも違和感はない。キャンプツーリングも行ったが、かなり荷物は詰めるし、さらにサイドバッグなどもオプションで用意されているので、長距離ツーリングなどで不足があれば併用してもいいだろう。組み合わせ次第でかなり拡張できる。そういう意味で正直積載性に不満はない。
パワーかトルクか
1200ccのツインエンジンのパワーは80ps。今どきの1000ccのバイクは軽く100psは出ているので(最新のリッターSSは200ps超え!)パワーは控えめといってもいいかもしれない。ただ、パワー(馬力)があればいいというものではない。実際、街中やツーリングで常用するスピードや回転数では、100psだろうが200psだろうが、その半分も使えないのが現実。最大パワーはそのパワーを出す回転数で発揮するものであって、実用的に大事なのはトルクだ。
代表的なスーパースポーツのホンダCBR1000RRとスペックを比べてみよう。
HONDA CBR1000RR
最高出力 192ps(141kW )/13,000 rpm
最大トルク 114 Nm/11,000 rpm
TRIUMPH Bonneville T120
最高出力 80ps(59kW)/6,550rpm
最大トルク 105Nm/3,500rpm
CBR1000RRは13000回転まで回さなければ、最高出力は得られない。実際公道でそこまで回したら2速に上げた途端に赤切符だ。
で、注目して欲しいのがトルクだ。簡単に言えばトルクは車体を押し出す力(引っ張り上げる力)と思えばいい。つまり高回転型のバイク(クルマ)は、加速力を得るのに高い回転が必要なのに対し、ボンネビルのような低回転で最大トルクを発生するようなバイクは、低回転から力強く加速していく。CBR1000RRが10000回転まで回さなければ発生しないトルクを、ボンネビルは3000回転で得ることができる。これが普段街中で乗るときに低い回転数でも力強く加速していくので乗りやすいし、低回転でドコドコと鼓動を感じながら走りが楽しめる。
スポーツ系バイクは、常に回転数を高くキープしないと力が出ないので、意外と街中では乗りにくくストレスが溜まる。昔の2stレーサーレプリカなんて低速はスカスカだった(スズキのRG250γなんて、タコメーターの表示が3000回転以下はなかったんだよ)。これがパワーに重きを置くかトルクに置くかで乗り味が大きく違うことにつながる。
ボンネビルT120はもちろん後者で、低速から怒濤のトルクを発揮して、アクセルを大きく開ければ体が置いて行かれるような凄まじい加速をする。一方、アイドリングよりやや高いぐらいの回転数でクラッチをつないでスタートすれば、バーチカルツインの「ド・ド・ド・ドゥ~」という、なんとも言えない気持ちよいサウンドとエンジンの鼓動を楽しませてくれる。もうクセになって、わざとエンストするかしないかの回転数でクラッチをミートして発進してしまう(笑)
コーナーリングについて
こういうバイクなので、目を三角につり上げてハングオフして走るバイクではない。が、峠道をテンポよく走ることはできる。ただし、車重もあって直進安定性が高い分、コーナーでの切り返しは重たい。
SR400と比べると、SRは車重が軽い特性を生かして、パワー不足による立ち上がりの加速を補うために高めのギアでできるだけスピードを殺さずにコーナーリングする乗り方をしていたが、ボンネビルT120はややアンダーステアというか外に膨らんでいく特性があるので、オーバースピードでコーナーに入っていくと「ヒヤッ」とすることが何度かあった。そこで、低速からのトルクを生かし、コーナーの手前で十分速度を落として回り込みクリッピングからしっかりアクセルを開けて加速重視でコーナーリングする乗り方がいいみたいだ。
これについては、モータージャーナリストの近田茂氏(元モト・ライダー編集者)のインプレッションがわかりやすい。
コーナーへの進入はキチンとスローインを励行し、バイクを倒し込んで少しのあいだ保舵しつつ優しくパワーONを加えて行くと、頭に描いた通りのラインを安定してトレースしてくれる。
バイクがバンクして起き上がるまでの挙動に伴う落ち着きや、僅かながら感じられる操舵トルクの大きさに、昨今のスポーツ系バイクとの違いを感じつつもライダーとマシンとがきちんと意思疎通しながら曲がっていくシーンは懐かしくもあり、気持ち良くもある感覚だった。
引用:回す必要のない逞しい底力、英国スポーツバイクとはまさにコレ。|トライアンフ・T120 Bud Ekins|Motor-Fan Bikes[モータファンバイクス]
近田 茂
1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の創刊メンバーに。1981年退社後はフリーランスとして専門誌や一般紙誌等、2輪に4輪にと幅広い執筆活動を続けている。ライディングやドライビングのインストラクター経験も豊富で、その技術には定評がある。東京都交通安全協会・安全運転管理者講習の講師も務めた。
基本的な「スロー・イン・ファースト・アウト」の乗り方だ。ちなみにクラシカルな雰囲気のボンネビルT120だが、ABSはもちろんトラクションコントロールまで装備されていて、安全性はSRより格段に高い。
さらに車体の剛性感が高いので、コーナーリング中に車体がよじれることはない。これって安心感につながるよね。SRのフレームはかなり弱かったので、深くバンクして体を内側に落とし込むとフレームがよじれて乗りにくかった。この辺りは40年前の古い設計のバイクだから仕方ないけどね。
一方ボンネビルT120のウィークポイントとしてバンク角が浅いので、ちょっとした交差点でもステップを擦ってしまう。かといってバックステップ付けるのもどうかと思うので悩ましい・・・
カスタムについて
ボンネビルは国産車と違って、サードパーティーのカスタムパーツが少ない。国内で出回る台数が少ないから仕方ないのかもしれないし、車検の通らないようなカスタムをすると、メーカー保証が受けられないこともある。
とは言っても、特にノーマルで不満はないし、ノーマルの雰囲気が好きなので、それを壊すようなカスタムはしたくない。それに限定車の特別装備で、LEDのウインカーやバーエンドミラーが付いているので、ノーマルのT120よりオリジナリティもあるし。
ただ、足回り(特にサスペンション)は、イマイチよろしくない。ダンパーの調整機能もないし(スプリングのプリロード調整はある)、大柄な外人が乗ってもへこたれないように足回りは固めになっていて、自分ぐらいの体重ではギャップでよく跳ねる。
そこで、サスペンションだけは社外のいいものを入れたいと思っていたが、有名どころのオーリンズやナイトロンは高いのよね~(10万諭吉ぐらい)。
そこで、SRに取り付けてあったYSSのサスペンション(Z366)を外して取っておいたので、これが付かないかメーカーに確認してみたら「マウントとエンドアイをボンネビルの寸法に合うものに交換すれば付きますよ」とお返事いただいた。
このメーカー(日本の取扱はPMCという淡路島にある会社)に直接送れば部品を交換してくれるとのこと。どうせなので、オーバーホールもお願いしたら、部品交換の工賃はオーバーホールの値段に含まれるので部品代だけでよいとのこと。
オーバーホール基本工賃 25,000円
マウントダンパー(4個) 1,600円
エンドアイ(2個) 6,000円
これに消費税を加えて、35,860円
新しく買うより全然リーズナブル!
オーバーホールは初回点検の前に終わっていたけど、とりあえず点検まではノーマルで乗って、点検後に取り付けてみた。
乗り味は、かなりマイルドになった。リアに加重を掛けたときに粘りがあるというか、動きもスムーズだし。ただ、写真見ていてお分かりのように、ノーマルに比べてYSSはかなり細い。ストロークも短いようだし、剛性やストローク不足に不安が残る。やっぱりSR用を流用するのは無理があるのだろうか? ただ、YSS Z366にボンネビルT120の設定はあるし、ショック本体は一緒なのだろうか?
とりあえず少し乗ってみて、不具合がありそうならメーカーに問い合わせてみることにする。
同時にフロントサスペンションもやや役不足というか固めなので、ダンパーやスプリングを変えてみたい気はする。
ここまでの評価(まとめ)
外車というと、国産に比べて故障が多いイメージがあるかも知れないが、トライアンフは、かなり国産のパーツが使われていて、故障も少ないと聞く。それにメーカー保証も2年間あって、有料だが1年延長もできる。自分は延長保証と3年分の定期点検(オイルやプラグ交換等も含まれる)のメンテナンスパック(税込94,900円)に加入したので、 そのあたりの心配はあまりない。
実際に乗ってみても、不安なところはなく、作りも精度が高く国産と遜色ない(イタリア製のMVアグスタに乗っていたときは、よくオイルをお漏らししていた)。
本当に乗りやすく、かといって乗り味が薄いとかそんな感じもなく、自分がいまバイクに求めているものを全て兼ね備えている最高の1台に巡り会えた感じだ。
一つだけ難点を言えば・・・
熱がスゴイ!
もうね。信号で止まると、ラジエターのファンが回って熱風が下から吹き上げてくる。夏は熱いとか、暑いとか、そんなレベルではない。
排気量の割には、ラジエターが小さい気もするし(900ccのラインナップと一緒のものみたいだし)、冷却に難があるのかな。あの空冷のようなエンジンのフィンも飾りではなく、本気で冷却のためだと思う。
あと、ブレーキは思ったより効かない。常用域では不足はないけど、もう少し効きのいいブレーキが欲しいところ。2021年モデルはブレンボのキャリパーが標準装備になったのも、そのあたりの事情なのかな?
今後も、1年ごとぐらいに定期的なインプレッションなどの記事を上げていきたいと思う。
だいぶ長くなったが、ボンネビルT120の購入を検討している人の参考になれば幸いである。
グループ参加しています。
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