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雇われて働くこと
企業は常に新しい商品を作り出したり、事業を起こしたり、変化させながら、必要に応じて社員を雇い、働いてもらう。ひとつの事業なり商品のライフサイクルが長ければひとつの仕事で長く働けるかもしれないが、実はそんな保証はどこにもない。
トヨタの社長が「終身雇用」を続けられないと言い、あれだけ危機感をもっているのは、クルマを生産してセールスするモデルの終わりが見え始めているからだ。「そう遠くない未来、多くの人はクルマを運転しなくても、ましてやクルマを所有しなくても目的地まで移動できるようになる」。わずか数年前だったら、それはドラえもんの生まれた未来の話だろ? と一蹴されそうな話だが、今となっては現実味を帯びた話だ。
「雇われて働く」
20世紀から続く社会システムに慣れすぎた。自営業やフリーランスより勤め人の方が圧倒的に多い現代の社会では、「会社勤め」が当たり前とすら思うようになった。自分もそうだ。ただ自分の時間の多くを切り売りして、それと引き換えに生活費を得るという雇用モデルが続かないことはみな薄々は感じている。
でも、なんとなくスタンダードから外れることが怖いのだ。手に職がなく自分で稼ぐ能力がなくても、どこかに勤めれば生活できるし生きていける。
しかし、その企業がずっと同じ仕事をいつまでもやっていてもらっては困ると言い出した。新しい価値を創造してもらわなければ困ると。
多くの仕事はロボットやコンピュータがしてくれるようになったから人自体もそれほど必要なくなった。
実際、横浜市のRPA導入の検証で、かなり驚愕のレポートが報告されている。
業務にかかる8割以上の時間が削減されたという。つまり人の手で行っていた作業をコンピュータのプログラムが一瞬で片付けちゃったのだ。瞬殺だよ・・・
この報告書を読んだブログ主はこう言っています。
ここから一番大変なのは、この澱みに長期間ハマってしまった大量の人々をどのように、「ロボットには代替できない業務」へ転用するかということです。経営者は勝手に、人間的な想像力の必要な業務が「働く誇りや働き甲斐にも繋がる」と考えがちなのですが、果たしてそうなのでしょうか。定型化されたルーチンを正確にこなすのが生きがいの人だってたくさんいると思います。あまりきちんとした絵が描けていないまま、90%超の仕事が削減されていくのですから、ぜひ労働者はこの事実を正確に把握し自分の身の置き所を考えていかなくてはいけません。「ジョブの再配置」で済んでいるうちはまだ平和だと、痛切に思います。
さあ、どうする?
ある日突然、あなたが毎日、何時間もかかって行っていた仕事は全く専門性も生産性もありませんでした、と宣告されたら?
役所の場合は簡単に人員をリストラできないからどうにかするのでしょうが(税金使われているんだから、それも困るけど)、民間企業じゃそうもいかない。
決まったことを、毎日決まった通りに、ミスなくやる仕事は今でもある。その中で工夫して生産性を上げてきた人もいる。人の手で行わなければならない作業も残ると思う。
一方で、そんな仕事を行う組織がいつまでも続くとは限らない。そう考えておく必要がある時代になってきたようだ。自分が退場を宣告されるか、先に会社が倒れるか。そうなる前にやるべきことは1つ。次のキャリアを準備することだ。
前編で見たように、インターネットが普及し、IT技術が日々めざましく進歩していく中で、人々の生活が(無意識的に当たり前が)変わり、求める商品もサービスも10年前のモノでは代替できなくなった。同時に企業自体の寿命みたいなものが短くなってきたことを感じることはないだろうか?
たとえば10年前に30万円で買った最新のカーナビが、いま、地図だけ新しく更新して同じ30万円で売れるだろうか? たぶん、同じ機能のものが随分と安く買えるようになっているし、そもそもカーナビの存在自体が危うい。スマホ1台あれば大概は事足りてしまうようになった。
でも、カーナビができる前に使っていた紙の地図は、たぶん5年、10年平気で使っていなかっただろうか。頻繁に使う人でも2〜3年おきぐらいに買い替えていれば用は足りていたし、金額はしれていた。
つまり昔は商品サイクルが長くて商品もビジネスモデルも時々アップデートしていれば良かったし、それほど頻繁にイノベーションが起きていたわけではないのだ。
実は面白い傾向がある。ハードを作っている会社とソフトを作っている会社では随分と明暗が分かれているようだ。
カーナビを作っていたパイオニアはかなり危機的状況だ。
パイオニアの2018年4~6月期決算の売上高は前年同期比0.6%増の838億円、営業損益は15億円の赤字(前年同期は2億円の赤字)、最終損益は66億円の赤字(同20億円の赤字)だった。主力のカーエレクトロニクス事業でカーナビの販売不振に加え、自動車メーカー向けの開発費用がかさんだうえに、特許訴訟に関連する損失の引当金など特別損失が響いた。
一方、地図を作っていたゼンリンは堅調のようだ。
株式市場が注目する自動運転関連銘柄。なかでも2017年に躍進が目立ったのがゼンリンだ。同社は膨大な住宅地図データを保有しているが、この地図データが自動運転でも必要となるため、その存在感が増している。ゼンリンの強みは何といっても全国約70の調査拠点が日々実施する現地調査だ。1日約1000人の調査スタッフが1軒ずつ歩き、目で見て調べる地図データの精度は他を圧倒する。
産業革命で君臨し続けていたものづくり企業が、インターネットが登場した情報革命以降、ビジネスモデルでソフトを持つ会社にその地位を奪われた顕著な形だ。さらに言えばトヨタのライバルが、実は日産でもホンダでも、GMやWW、BMWでもなく、GoogleやAppleであることは紛れもない事実だ。
会社の寿命は15年
終身雇用が難しくなったのは、企業そのものが短命になってきたからとも言える。昔から続く名門企業でさえ、ビジネスモデルの転換を迫られている。当然社員に求められる知識も技術も変化していく。
アメリカの企業の平均寿命が極端に短くなっているようだ。
実はここ60年ほどで企業の平均寿命が極端に短くなっている。
1955年における企業の平均寿命: 75年
2015年における企業の平均寿命: 15年
そう、新陳代謝の激しい現代のアメリカでは、企業は平均的に15年でその生涯を終えていることになる。もちろんその中には、短期間のエクジットで成功したスタートアップや、大企業同士のM&A, そして数百年も続く老舗企業もあるだろう。しかし、全体でみると、激しい生存競争が繰り広げられているのは間違いない。 ちなみに、1955年にFurtune 500に入っていた企業で現代でもその枠に残っている会社は60社しかないのだ。
日本でも、倒産した企業の平均寿命は23.9年となっている。
この中で、30年以上の「老舗企業」が32.7%を占めていて、その6割近くは製造業だという。
倒産した企業のうち、老舗企業の構成比を産業別にみると、最高は製造業の57.1%(前年は52.9%)。次いで卸売業38.6%(同36.5%)、農・林・漁・鉱業37.9%(同25.8%)の順となった。新興企業の構成比を産業別にみると、最高が金融・保険業の73.3%(同44.7%)で、次いでサービス業他38.1%(同37.6%)、情報通信業28.0%(同27.1%)などの順。
日本は製造業で世界トップクラスに登り詰めたが、そこから転換が遅れた。たぶんアメリカの製造業や重工業が早くから不況に陥ったことで情報産業が台頭したのは自然なことかもしれない。
政府は、高齢化による年金などの社会保険財政の逼迫化を受けて、年金の支給年齢を70歳まで引き上げようとしている。同時に高齢者雇用安定法を改定して企業の定年を70歳までに引き上げるよう検討しているようだ。
人の寿命は伸びていても、企業そのものが続かないんだそ!
マネジメントの父と言われるドラッカーがこんなことを言っているそうだ。
ドラッカーは、会社の寿命が、個人の寿命よりも短くなったことを、悲観的ではなく、楽観的ではなく、ただただ指摘している。
「働く者、特に知識労働者の平均寿命と労働寿命が急速に伸びる一方において、雇用主たる組織の平均寿命が短くなった。今後、グローバル化と競争激化、急激なイノベーションと技術変化の波の中にあって、組織が繁栄を続けられる期間はさらに短くなっていく。これからは、ますます多くの人たち、特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない」(『プロフェッショナルの条件』)
引用: 会社の寿命が10年の時代にどの業界でどう稼ぐか?|未来の稼ぎ方|坂口孝則 - 幻冬舎plus
つまり、個人がいくつかのキャリアパスやオプションを用意しておかなければ、簡単に言えば複数の仕事を渡り歩く準備をしておかなければ、働き続けることができない時代になったということだ。
だから、最近政府は熱心に副業を推奨しているんだ。そういうことか・・・ わしゃそんなに働かないけど(笑)
会社もいくつかのビジネスモデルを渡り歩く必要がある
100年に一度の変革期と言われる。ビジネス環境が本当に変わった。自分の仕事も、自分のいる業界すら先行きが見えない。
今の会社も25年の間に、いくつかのマイナーチェンジはしてきた。最初の5年は食うための5年でなんでもできる仕事は受けた。大変だったけど、これが自分にとって仕事をする上での引き出しを増やしてくれた。
その後の10年はいくつかの仕事の中から比較的稼げる2つの事業の柱をもって進めたが、途中1つの事業が過当競争と価格競争に巻き込まれ、業務量が多い割には利益が出なくなった。そのころ創業者が辞めて経営体制が変わり一つの決断をした。思い切って利益の出ない事業を止めて、もう一つの事業に専念することにした。止めた事業の人員はもう一つの事業に振り分けたが、新しい仕事に馴染めず辞めていく人も多かった。
その後はなんとかヒット商品にも恵まれて業績は順調に推移してきた。しかし・・・
今の本業も厳しい時代になってきた。たまに業界関係が集まる会合に出かけることがあるのだが、危機感だけはあるんだけど、根本的に業界を変えようとする意識はなくて、古い商習慣の延長線上で何か変えようと小手先の努力を続けている。もうこの業界も長くないと思う。
同時に、自分の専門分野もあまり芳しくはない。
まだ、会社自体の業績は伸びているが、もうそろそろ頭打ちのような気がしてならない。しかし社員には今の仕事を頑張ってもらわないと基盤が揺るぎかねないので、仕事を効率化することと商品のアウトプットを増やしてシェアを伸ばすように目標を立てている。
自分は基本的に既存業務を離れて、とにかく業績が良いうちに(お金があるうちに)、次の稼ぎ頭を作ることに専念するつもりだ。去年、タネはまいたし、もうすぐ芽は出そうだ。
つまり、使えるリソースだけ残して、これまでの財産を生かせる業態にフルモデルチェンジをする決意をした。
うまくいくかどうかはわからない。社員の見方も懐疑的だ。ただ、自分も伊達に25年間この業界で生きてきたわけではない。サバイバルして生き残ってきた。だからわかることもある。匂いがするのだ。
つまり会社だって変化しなきゃ生き残れない。社員を雇用し続けられない。
さあ、今日から仕事だ。がんばろ。
【参考文献】
コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)
- 作者:ゲイリー ハメル,Gary Hamel,C.K. プラハラード,C.K. Prahalad
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: 文庫
プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
- 作者:P・F. ドラッカー
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2000/07/01
- メディア: 単行本
Kindle版 ↓
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)
- 作者:クレイトン・クリステンセン
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 単行本
Kindle版 ↓
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press
- 作者:Clayton M. Christensen
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: Kindle版