昨年の冬に、市の商工会議所で開催された「創業セミナー」を受講した。
このときには、すでに会社に辞意を伝えていて、翌年3月の退職は決まっていた。会社を辞めた後は、ひとまずフリーランスで働くつもりでいたので、個人の開業とか税務、会計なんかのことを知っておけば役に立つかな、ぐらいのつもりで受講したのだ。
それが実際に参加してみると、結構ガチな内容で、日曜日の朝10時から夕方5時まで、計4回、創業のこころ構えから始まって、ビジネスモデルの作り方から損益計算書や貸借対照表、決算書の読み方、そして資金繰り、融資の受け方、SNSの活用法までみっちりカリキュラムが組まれていた。
参加者は、もう実際に事業を始めるつもりで参加している人も多く、ビジネスプランを作って発表するグループワークでは、かなり具体的なプランを考えている人もいた。一方で自分のように何となく個人事業主でやっていけたらいいな、ぐらいの人は、なんだかフワフワした内容で、ビジネスプランを埋めるシートに空白が多く、創業や起業に関する意識の差を感じたのをよく覚えている。
* * *
ただ、このセミナーを受けてよかったのは、「自分のやりたいこと」よりも「自分には何ができるのか」を認識できたことだ。
よく、定年退職したらカフェをやりたいとか、そば屋をやりたいとか、輸入雑貨のお店を開きたいとか夢を見る人がいる。
好きだから、昔からの夢だったから、一国一城の主になりたいから・・・別に動機は何でもいいのだけれど、経験や知識もなく大した準備もせずに退職金をつぎ込んで勢いで開業した人のほとんどは、3年も続けられずに退場することになるらしい。
若いうちならいい。大いにチャレンジすればいい。
でも、50歳とか60歳とかになって、起業するなりビジネスをはじめるには、これまでの知識や経験、技術とか人脈とか、自分が創り出し提供できる価値をベースにはじめることを基本とすることが重要、と講師の先生がハッキリと言っていた。
うん。わかる気がする。その年齢で失敗したら取り返すのは難しい。だからもし経験も知識もなく価値の提供もできないのであれば、おとなしく元の会社に再雇用されるか、どこか雇ってくれる会社に再就職したほうがいい。
夢と現実は違うのだ。
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それはわかってはいる。けど、前回の記事にも書いたように、話の流れから必要に迫られて法人設立をすることになった。サラリーマンしか経験のない自分が会社を立ち上げるなんて「本当にできるのかな?」と不安もあるが、まあ、冴えない近所のおっさんが社長やってたりするので、自分でもやってやれないことはないだろうと準備をすることにした。
改めて創業セミナーの資料を引っ張り出して見返してみる。
このときのビジネスプランを作成する演習で、とにかく自分ができること、取引できそうな会社や法人、個人のお客様などを片っ端にリストアップしてビジネスの骨格らしきものがシートに描かれていた。
実は、このセミナーを終えて、何となくビジネスをやるんだったら、これだな、という枠組みはおぼろげながら見えていた。
まず、これをベースに、前回の記事で書いた取引をしようとしている会社に、自分に何ができて、その会社の事業にどのように関わり利益に貢献できるのかをまとめた提案書をつくって、メールで送信した。
セミナーで配布された分厚い資料ファイルを丁寧にめくっていると、中から1枚の気になる書類に手が止まる。
なになに。見出しを確認すると、
「認定特定創業支援等事業により支援を受けたことの証明に関する申請書」
と書かれている。タイトル長いわwww
どうも、商工会議所の創業セミナーは、経産省の創業支援事業に指定されたセミナーで、受講者は株式会社を設立するときに、登録免許税が軽減されるみたいだ。さらに日本政策金融公庫から無担保、無保証人の開業支援資金の融資が普通より低金利で受けられるらしい。
「おーーー!ラッキー!」
そうか、だからセミナー受ける人が多かったのか。受講料は確か1万3000円ぐらいだったけど、お金まで出して学びたい人なんてそんなにいないだろうなんて思っていたら、定員30名の枠はすぐに埋まったらしい。なんならキャンセル待ちもあったみたいだ。これ目当てでセミナー受ける人が多かったから(つまり創業が前提の人)、あんなにみんな真剣だったんだ。(いまさら気づく💦)
こんな特典があれば元を取っておつりがくるぐらいだ。あのとき、ケチらずに申し込んでよかった(笑)
通常、株式会社を設立するには、最低でも25万円ぐらいかかる。もし、司法書士に頼むとなると、さらに10万円ぐらいかかるらしい。これに資本金も準備しなければならない。資本金は1円でも会社を作れるが、融資を受けたり、他社と契約するような仕事をするのであれば、最低100万円ぐらいは用意しておく必要があるという。
できれば、初期費用は抑えたいし、機材の購入や半年分ぐらいの運転資金は確保しておきたいので融資が受けられればかなり助かる。
早速、証明書をもらうために、商工会議所に電話して、ついでに融資に必要な創業計画書の書き方についても相談するためのアポをとった。
つづく
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