少し前のこと。
Xでマンガが投稿されていた。
最近よくあるようで、マンガの1話分ぐらいを掲載して、コミック(紙、もしくは電子)を買ってもらおうというプロモーションだ。
「しなのんちのいくる」というマンガだ。
昭和後期~平成初期の笑いにあふれる日々を描いた思い出漫画!「あの頃」の懐かしい記憶がよみがえり、ノスタルジックな気分へと導かれる。
つられて読んでしまったが、確かに懐かしい感じ。自分の小学生の頃よというより、もう少し後の世代の話になるが十分わかる。
自分は昭和生まれだが、一番長く過ごした時代は平成だ。時代成分表でいくとこんな感じ。
約30%が平成で次いで昭和が約22%
幼少期から大学生の途中までが昭和。人生のど真ん中の20歳から50歳までの30年間を平成で過ごした。
平成初期なんて自分にとってはついこの前のようで、まだノスタルジーを感じるほど時を経ていない感覚なのだが、現実は35年も前なので今とは全く次元の違う世界の話だ。
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平成初期とはどんな時代だっただろう。平成が始まったのは西暦で1989年。元号が変わるとき自分は学生で正月休みの最中だった。アパートのベッドのなかでボーッとテレビを見ながらそのニュースを見ていた。
その変わり目は昭和と地続きで平成と元号が変わっても昭和色が濃く残り、まだバブル景気が続いていて街は賑やかだった。学生でもDCブランドの服を着て、クリスマスやバレンタインデーといったイベントには、洒落たレストランで食事してシティホテルに宿泊した、らしい・・・自分はバイト三昧の割にバイクのガス代とパーツ代につぎ込んで金がなかった(ToT)
まだバイクブームも続いていて、レーサーレプリカ全盛の中でカワサキからゼファーが発売されたのもこの頃だ。ゼファーは前世代に登場したZ400FXの再来と大ヒットした。
ファミコンが普及して、子どもだけでなく大人までファミコンにハマった。まだ、ネットも携帯電話もほとんど普及していない。なんなら大学3年生のときにやっと電話の加入権を買って電話を引くまで、自分のアパートには電話がなかったぐらいだ。
音楽はユーミンやBOOWYをよく聞いていたな。原田知世ちゃんの「私をスキーに連れてって」が大ヒットしてスキーブームが起こった。1991年にバブルが弾けその影響が広がる前まではスキー場はどこも混雑して、スキー場に向かう高速道路は夜中でも大渋滞していた。
この頃まで昭和の残像がグラデーションのように平成に影を落としていた。
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やがてバブルが弾けて失われた30年がはじまる。今の40代から50代前半の世代は、氷河期世代と言われ就職難で冷や飯を食わされた。ほんの数年生まれるのが遅かったら、自分もこの世代に入る。本当にどの時代に生まれるかは運というか”ガチャ”みたいなものだ(どの時代に生まれても、幸・不幸はあるが・・・)。
平成の30年間でいろんなことを経験した。
ベルリンの壁が崩壊したのは平成元年だった。同じ年に社会党が第1党となり、平成5年には非自民党の細川政権が誕生。
平成7年に高速道路の橋脚が折れて傾いた映像に衝撃を受けた阪神淡路大震災が起こる。
オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こしたのも平成7年だった。この年は平成の厄年だった。
アメリカで世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んだ「同時多発テロ」が起きたのは平成13年。
リーマンショックは平成20年。
東日本大震災は平成23年。大規模な原発事故を経験し、悲しいかなこの時の政権は民主党で、対応が後手後手だった。その後甚大な影響と復興のへの道のりが困難なことと、莫大な原発事故の後始末と復興費用を国民が負担しなければならなくなった(復興税)。
第2次安倍内閣が成立しアベノミクスが始まったのは平成24年。
平成28年には熊本地震。
同じ平成28年にアメリカでトランプ政権が誕生し「アメリカファースト」「過去の栄光を取り戻す」と息巻いて、世界が大混乱した。
振り返れば結構色々あった。平和な日常の土台というのは案外脆い土台の上にあるものだと感じる。
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自分にとって平成の記憶というのは案外生々しくて、とてもノスタルジーを感じるレベルまでに昇華されてはいない。が、令和も進めばいずれ懐かしむ時代になるのだろう。
テクノロジーが加速度的に進歩するのを目の当たりにする令和に比べれば、昭和も平成もまだのんびりとした雰囲気があった。多分数年後には自動運転が当たり前になり、ドローンが人や荷物を運んで飛び回っているのだろう。ビジネスの多くは仮想空間で行われ、アバターを介してコミュニケーションするのがデフォになる。いろんなことがAIに取って代わり、人間は膨大な暇を持て余すことになる、なんてSFチックなことも現実となるんだろうな。
そのとき、昭和とか平成がとても人間臭くて、人々が必死に生きて、過ちを犯しながら少しでも豊かに暮らそうともがいている姿にノスタルジーを感じるのかな?
そのとき、ぜひ、このマンガを令和生まれが大人になった時代の人たちに読んでいただき感想を聞きたいものだ。
そこまで昭和生まれのおじさんは、しぶとく生き抜いて見せますよ(笑)