ツーリング2日目。朝の志賀草津高原道路。
空気は冷たいが震え上がるほどでもない。
ここは東京や大阪、名古屋などの都会からアクセスがよいわけではないので、三連休といえども、朝の早い時間はバイクも観光のクルマも含めてそれほど交通量は多くない。観光で滞在している人も朝は高原の空気を吸ってゆっくり出発したいだろう。
これが現地に宿泊したライダーへの快走優待チケットになる。
1200ccのバドのエンジンも調子はいい。熱量の高いエンジンにはこのくらいの気温がベストだ。標高が高いので空気は薄いが、そこはインジェクションなので燃調が狂うこともない。
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この道は、国道として一番標高の高いところを通っていることで有名だ。ウィキペディアには「国道最高地点は渋峠より数百メートル群馬県側にあり、標高2,172 mの『日本国道最高地点』の碑が建てられている」と紹介されている。
多くの観光客は、その最高地点の石碑のある駐車場に停めて写真を撮るのがお決まりだが。
駐車場にはクルマやバイクが何台も停まっていて、途中でパスしてきたクルマも後ろから来ているのでここはスルーして、その先の眺めのいいパーキングに停めた。
森林限界を超えているのか、高い木はなく熊笹の見晴らしのよい風景が広がる。
ガイドブックに載っていそうな写真が撮れた。
振り返ると、山肌は結構ゴツゴツしている。アメリカンのライダーが小気味よい音で脇を通り過ぎていく。
奥の方にうっすら雪を被っている山影は北アルプスだろうか?
バイクで、こんなに高いところまで登れるのは、ここと八ヶ岳を越える麦草峠だけだ。しかしコロナになってから自分の足で登ってないなぁ。当時は山小屋もいろいろ大変そうだったし、その間にちょっと登山熱も冷めてきちゃったし。この冬、久しぶりに雪山でも行こうかな。
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以前から志賀高原に行った時には、ぜひとも立ち寄って見たいところがあった。
「毛無峠」
志賀草津高原道路を長野県側から草津方面に向かって走り、最高地点を過ぎてしばらく行くと万座方面に向かう標識が見える。ここを右折する。万座温泉のホテル街からさらに奥に向かう細い県道を走り、
「ほんとにこの道であってるのかな・・・」
と心細く不安になったころで未舗装の道路になる。そこが毛無峠だ。
来るところまで来た感じだ。
正確には長野県須坂市と群馬県嬬恋村を結ぶ県道112号線上にあり、この先は通行止めで道もつながっていない。
群馬県の文字が消えかかる県境の標識。遭難多発区域の注意喚起もただならぬ場所という雰囲気に拍車を掛ける。
なぜ、こんな山奥の峠に来たかったと言えば、実は案外ここは有名な観光スポットでもある。
その先にかつて硫黄の採掘で栄えた小串鉱山跡があるのだ。
写真の中程に山肌が見えたところが、かつて小串鉱山があった場所だ。この山奥深い、また冬は雪に閉ざされる辺境の地に、昭和30年代の最盛期には2000人以上が暮らしたといい、小中学校に映画館、ショッピングセンターもあったそうだ。
以下のサイトが詳しい。
群馬・長野県境にある小串硫黄鉱山(小串鉱山)跡には2000m近い豪雪地帯という厳しい環境の中、最盛期には約2100名の方が暮らしていました。
40年前に廃鉱になるまで、国内最大級の硫黄鉱山として、国の発展を助けたことでしょう。
昭和12年には大きな斜面崩壊が発生し、住宅や学校を土砂が襲い200人以上の犠牲者をだした悲しい歴史もある。
今でも、硫黄を運ぶ索道の鉄塔が残っている。硫黄は群馬県側からこの索道を使って長野県側に運ばれた。人々の生活物資もこの索道で搬送されたようだ。
昭和の遠い記憶の残骸。鉱物でも鉱石でも石油でも、資源が見つかれば、どんな山奥だろうが、砂漠だろうが、厳しい自然環境の土地でも、金目当てに人はわんさか集まってくる。やがて、それが採れなくなったり、別のモノに代替されると、人はまた別の金のなる木を求めて次々と移り去って行く。よくある話だ。
この、どこかもの悲しい風景がなぜか人々の心を動かすようで、この地を訪れる人は意外と多い。自分もそのひとりだ。
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毛無峠には、1時間ほど滞在して後にした。
ここからの帰路は、志賀草津高原道路まで戻らずに、有料道路の万座ハイウェイを使うことにした。この道は、プリンスホテルを経営する西武グループが作った私道だ。
志賀草津高原道路のような開放感はないが、森の中を一気に駆け下りる爽快感がある。万座温泉までのアクセスのために作られた有料道路なので、連休と言えどもあまりクルマは多くない。
標高差約1000メートル、総距離20.3キロメートル、カーブは60か所。これを心ゆくまで堪能する。
前のめりにならないよう少し腰を引いて重心を後ろにかけ
ブレーキングしながら
シフトダウン
コーナー手前で、逆方向に軽くアクションを入れ、
ターンイン
目線は常にコーナーの先へ
落ち葉や路面の割れ目、起伏に注意を傾け
コーナーリング中のスピードコントロールはリヤブレーキを使い、
クリッピングを越えたら、徐々にアクセルを開いて車体を起こしていく。
連続する下りのコーナー。一つひとつ丁寧に味わうようにコーナーをクリアしていく。
バドと自分の身体がシンクロする至福の時間だ。
万座ハイウェイから鬼押ハイウェイへ乗り継ぎ、軽井沢方面に抜ける。紅葉の木々の間を駆け抜けていくのも気持ちがいい。
コーナーの先に浅間山が迫ってくる。
なんとも荒々しい山だ。昔、この山の麓でオートバイレースが開催されていた。
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軽井沢は人もクルマも多く渋滞していた。
抜け道を見つけて渋滞をパスし、国道18号で小諸方面にバドを走らせる。
途中、中山道の宿場町を見つけて立ち寄る。追分宿だ。
ここには、軽井沢にゆかりの深い堀辰雄の記念館があった。あの「風立ちぬ」の作者だ。
ジブリの「風立ちぬ」は、この堀辰雄の原作と零戦を設計した堀越次郎を掛け合わした作品。なんとなくあのアニメの風景が浮かんできた。
ちなみに、ジブリはこの作品と「紅の豚」が好きだ。あとカルシファー🔥
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ナビを中部縦貫自動車道の佐久北ICに設定して走っていると、「信州味噌使用!名物みそラーメン」の看板が目に入る。もう13時を過ぎている。引き寄せられるようにご入店。みそラーメンを食らう。結構味濃い。
ここからは、中部縦貫道の無料区間で八千穂高原ICから299号線、通称メルヘン街道で麦草峠を越えていく。1日に2回も2000メートルを超える峠越え。何キロも続くワインディングで途中でクルマに追い付いたのは幸いにも数台。ほとんどのクルマはすぐに左に道を譲ってくれたので、一度も詰まることもなく一気に反対側の蓼科まで駆け抜けた。
と、いうことで途中の写真はない。蓼科の先のコンビニでコーヒータイム。振り返ると八ヶ岳。あ~走った走った。もうコーナーお腹いっぱい(笑)。
ちなみに、去年もここ走ってた。
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諏訪ICから中央道に乗って、途中、どうにもならないほど眠くなって駒ヶ根サービスエリアのベンチで30分寝た。高速道路は走っていてホントつまらんし、カウルのないボンネビルで走るのは苦行に近い。
結局、家に帰り着いたのは19時を少し過ぎていた。
【ツーリングデータ】
期間 2023年11月3日〜4日
走行地域 長野県・群馬県
宿泊地 奥志賀高原ホテル
総走行距離 742Km
ガソリン給油 3回 22.99L
【費 用】
宿泊代 15,268円(クーポン割引あり、夕朝食付き)
高速代 3,600円(ツーリングプラン)
有料道路 1,150円(万座ハイウェイ、鬼出ハイウェイ)
ガソリン代 4,114円
食事代 2,220円
お酒・おつまみ 3,710円
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合計 30,042円