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【小説】『夏美のホタル』を聴くか?読むか?

 

『夏美のホタル』という映画をだいぶ前に観たことを思い出した。

 

https://fc.ccb.or.jp/movie/detail.html?CN=320382

 

カメラマンをめざすヒロインを有村架純が演じていて、父親の形見という古いSRに乗って自然豊かな田舎に出かけ、そこで出会った「たけ屋」のおばあさんとその息子との交流を描いた作品だった。

 

実は朝ドラの「ひよっこ」を見て以来有村架純の大ファンとなり、今でも大好きな女優のひとり。その頃にDVDか何かで観たのだろう。

 

*  *  *

 

この映画を思い出したのは、オーディブルのおすすめに『夏美のホタル』が表示されたのがきっかけだ。

 

Audible版『夏美のホタル 』 | 森沢 明夫 | Audible.co.jp

 

「確か原作って読んでないな」

 

そう思って聞き始めた。

 

ちなみにオーディブルのサブスク(月額1500円)に入っている。ラインナップはすべて聴き放題だ。

 

www.bullpowerworld.com

 

少し聞き始めて「ちょっと待て。これは活字も必要じゃないか?」と感じた。聞いただけでは内容がスッと入ってこない。主人公の名前の漢字もわからないし、何より音声だけでは何かが足りないと瞬間に感じたのだ。

 

慌ててAmazonで検索して、文庫本の購入ボタンを押そうとしたとき、「待て待て」と脳内で待ての信号が発信され指先を止めた。

 

Kindle版もある。文庫本より少し安い。サンプルをダウンロードしてみて、「うん。全然これでイケる。文庫本の到着を待たなくていいし、すぐに読み始められるし」。文庫本より字が大きいので、少し老眼の入った目にも読みやすい。もう紙だとかデジタルだとか言ってる場合じゃないよなぁ、と情報通信技術の進化を受け入れた。

 

 

*  *  *

 

情報通信技術の進化をフル活用するように、スマホをAnkerのスピーカーにBluetoothでつなぎ、8インチのfireHDタブレットに『夏美のホタル』をダウンロードする。Kindleで小説を読むには8インチのタブレットがちょうどいい。もうAmazonの最優良顧客だろ、オレ。Amazonから表彰されてもいいぐらいだ(笑)

 

f:id:bullpowerworld:20231124125904j:image

 

 

準備が整った。

 

物語を読みながら聞き始めた。

 

「ああ、原作は映画とはまるっきり設定が違うんだ」と知った。

 

(以下、ネタバレ含みます)

 


 

まず、ヒロインの乗るバイクが違う。映画はSR400だったが、原作はCBX400F。表紙の絵をよく見ると、確かにCBX400Fのテールランプだ。死んだ父親の形見として大事に乗っていると言う設定は、夏美の父親は自分と同じ1980年代に青春を送っていたのだろう。モリワキのマフラーに交換されている、なんて丁寧に描かれている。

 

 

これは「あとがき」を読んで納得したのだが、この作者の森沢明夫は、やっぱり自分とほぼ同年代でバイク乗り。若い頃この作品の舞台となる房総半島をよく走っていたらしい。自分も学生の頃は千葉に住んでいて、当時乗っていたZ400GPで授業をさぼって走り回っていた。なんだ。同じじゃないか(笑)

 

主人公の設定も違う。夏美はカメラマン志望の専門学校の学生ではなく幼稚園の先生。映画では、夏美が主人公として描かれているが、小説では夏美の恋人の相羽慎吾が美大の写真学科に通う学生で、どちらかと言えば慎吾視点の描写が多い。

 

物語としては、断然、小説の方がおもしろく、伏線もよく練られている。何より心に染みるストーリーだ。

 

*  *  *

 

ナレーションを担当しているのは、女性の声優さんで、

 

「フォォォォーン、 フォン フォン、 フォォォーン! 」 

 

とCBX400Fの排気音が描写されているのだが、これが拍子抜けするほど素っ頓狂な幼い声で吠えている感じなのだ。400マルチのエンジンにモリワキの集合管から発せられる排気音はそんな音しないだろう、と思わず笑ってしまった。

 

やっぱり活字も読んで正解だ。アタマの中で昔聞いたCBXの4気筒エンジンとモリワキのマフラーから聞こえる排気音を再生する。

 

しかし、この森沢明夫という作家は、うまく漢字で音やその場の空気を表現する。

 

「軒下の風鈴が、凜、と鳴る。」

 

と、風鈴の音を「凜」という漢字を使って「リン」と表現したり、

 

幽かに秋の匂いをはらんだ切ない感触の風だった。」

 

と、大体「かすかに」と漢字で書くとき「微かに」と書いてしまいそうなところを「幽」と言う漢字を使ったり。

 

これは、朗読を聴いているだけじゃ伝わらない。

 

そして、日本語は情緒に溢れて、なんて表現力豊かな言葉と文字を使うのだろうと、今さらながら思った。

 

アルファベットを使った英語では遠く表現できないだろう。単なる記号のアルファベットと文字自体に意味をもつ漢字とでは表現の幅が違う。それに、平然とひらがな・カタカナと時にアルファベットも使いこなし文章を構成し表記し、それを読んでしまう日本人の器用さに改めて驚嘆してしまう。私たちは日本人は、日本語を使っているだけで世界でも稀少な表現者なのだ。

 

途中から、audibleはオフにしてKindleだけで読み進めた。どうしても夏美の声がしっくりこない。小説の中の夏美も有村架純に演じて欲しかったからだ。

 

森沢明夫の作品は、活字で読むのが正解だ。少なくとも「夏美のホタル」は。

 

 

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