
もう、家の近所の桜並木はだいぶ花を散らして、新緑の葉が芽吹きはじめた。
4月に入り新年度が始まったとニュースは伝える。
私と言えば「もう1年経ったか」という思いが先に浮かぶ。ちょうど1年前の3月31日で27年勤めた会社を辞めたのだ。だから新年度といっても特に何かあるわけではない。
子どもたちがいた頃は、進級とか進学とか、何かと節目の行事があったけど、その子どもたちも成人して働いている。
自分は会社を辞めているから、新入社員がどうのこうのも関係ないし、昨年7月に自分の会社を設立したが、自分ひとりも持て余しているような状況で人を雇うことなんてあり得ない。
本当に他の日とも何も変わらない、1年365日あるなかの、ただの4月1日なのだ。
* * *
会社を辞めた当初、本当の無職になった。57歳の無職のおっさんだ。
さぞかし、自由な日々が待っているのだろうとワクワクした。朝寝坊して、平日の昼間にツーリングに行ったり映画見たり、早い時間からビール飲んで・・・なんて思い描いていた。
ところが、平日の昼間になかなか出かけられない。なんとなく後ろめたいのだ。近所の人は朝から通勤通学に出かけ、住宅街に人通りはほとんど無い。歩いているのは完全に隠居した老人が散歩しているくらいだ。
そして、何も生産的なことに関わってない自分に背徳感を覚える。平日の昼間に家に引き籠もる無職のおっさんなんて、存在価値あるのか? と自問自答したこともあった。
会社を辞めて2か月間はそうして過ごした。あまり開放感はなかった。通算35年で身についたサラリーマンの習性ははそう簡単に抜けることはない。
そして、何か仕事を始めようとして、昔の顧客や知り合いを当たったり、求人に応募しても、57歳の無職のおっさんに簡単に仕事は見つからない。
そうして、昔の取引先に個人事業主で委託契約で仕事をさせてもらえないかと頼んだところ、法人でなければ契約できないということで、どうせサラリーマンに戻るなら、会社作って社長になろうと起業したわけだ。
ただ、法人を作ったところで、何の実績もない会社と委託契約は難しいという話になった。そりゃ相手は誰もが知る大企業のグループ会社(特定の事業を行う子会社)で、そこの社長と懇意にして話を詰めたところで、グループ会社の社長は、本社の部長ぐらいの役職で、むしろ本社で芽がなくなって出向しているぐらいの立場だ。
当然、本社の意向と承認が必要であえなく話は立ち消えになった。
会社設立当初の事業計画では、そこからの委託契約金を売上の柱にしていたので、のっけから事業計画は見直しを迫られた。
昨年の8月から9月にかけての話だ。
正直、会社作って、公庫や信金から創業融資も受けて、「さあ、やるぞ!」となったところで、いきなり計画が狂ったのだから、そりゃ焦るわ。落ち込むわ。
その後、知り合いとか、知り合いの知り合いみたいなところから長年やってきた編集の仕事を受注して、なんとか売上をつくることはできたが、まだまだ安定的に仕事が受けられる状態ではない。ある意味35年のサラリーマンの実績は、自分自身の実績と言うよりは、過去に勤めていた会社の実績ということが痛いほど身に染みた。
最近の飲み友だちや、会合などで知り合う人は、多くは経営者か個人事業主だ。みんな、本当によくやっているし、考え方も合理的でシビアだ。
自分の甘さに気づかされる。
* * *
ただ、年が明けて何となく考え方が変わってきた。
来年になれば自分も60歳だ。
普通なら定年になる。と、いっても最近は65歳まで雇用延長が義務づけられているので、60歳でやめる人は少ないみたいだ。
ただ、役職が外れて、給料が半分になり、不本意な部署に異動されられて、渋々働いている人も少なくないと聞く。私の周りでは、60歳でスパッと辞めたり、再雇用で2年も持たずに辞めてしまったという感じの人が多い。
なんだかなぁ~
それで思ったわけ。自分はどうかと?
もう、十分働いてきたんだし、まだカラダも元気だし、子どもも成人し、家のローンも今年の5月で完済だ。それほどお金を稼がなくてもやっていける。ある程度、自分の思うように生きていってもいいんじゃないかなと。
仕事は、受けられる分だけ、丁寧に作業する。
時間的余裕をつくって、山を歩いたり、ツーリングに出かけたりする。
ときどき、気の合う友だちとごはんに行ったり、飲みに行く。
普段は、できるだけ自分で料理して素材の味を味わう。
無理に仕事やスケジュールを詰め込まないようにする。
そういう心境になってきた。
するとね。意外と自分と同年代のおじさんと山であったり、平日のツーリング先で出合ったりするんだよね。
早めにリタイヤしたとか、60歳の定年でスパッと辞めたとか。そう。こうして人生を楽しんでいる人も少なくないんだな。
十人十色。人生はそれぞれだ。まだまだ働きたい人もいるだろうし、働かざるを得ない人もいるだろう。そういう人生を選んだのはその人自身だ。
私は、ブルさんに仕事を頼みたいという人のために、そして今はバラバラに住んでいる家族のために、そして親しくしてくれる友人のために、何より自分自身が楽しいと思うことに時間とリソースを使って生きていきたい。
もう組織の人間関係で悩んだり、取引先の無理難題に頭を抱えたり、気の合わない人との付き合いはまっぴらごめんだ。
この1年間で、テンション高くなったり、落ち込んだりして、だいぶ心が揺れ動いた。ようやくこの先の自分のライフスタイルが見えてきたような気がしている。
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