
前回、父親に会ったのはいつだっただろう?
もう1年ぐらい会っていないような気がする。
88歳になる父親とは、自分が岐阜で暮らしはじめてから直接顔を会わせることは滅法少なくなったが、普段は定期的にLINEでやり取りしている。まあ、こう言っては何だが単純な理由でLINEに返信があれば、とりあえず認知機能は保たれていると安心できるからだ。歳が歳なだけにやっぱり認知症が心配だ。ちなみに母親はもうすでに他界している。現在は独身の妹と2人で横浜で暮らしている。
そんな父親から「たまには会いたい」と返信が来た。
そこそこ東京や関東周辺に出張はするが、実家に寄る時間がなかなかない。盆や正月もわざわざ人の多い期間に移動したくないので帰らずじまい。それに、いろいろと事情があって、父親と同居する妹とは顔を合わせたくないので、たまに父親と会うときはいつも最寄りの駅まで来てもらって外で会っている。
家庭によって事情というのはいろいろあるものだ。肉親だからこそ問題がこじれると厄介なこともある。友だちと話していると、きょうだいで骨肉の争いをしているなんてドラマにもなりそうな話も聞くようになった。
それでも年老いた父親とできれば顔を会わしておきたいし、話をしておきたいこともある。母親の墓参りにも行きたいと思っていたので、出張のついでとかではなく、父親に会うことと墓参りを目的に横浜まで行くことにした。
* * *
母親の墓参りに行くには、公共交通機関を使って行くには不便な場所にある。父親はまだクルマの免許は保持しているし、クルマも持っているが、年齢的にもクルマは運転しないように言ってある(なかなか返納してくれないので困るが・・・)。
そうすると、現地で移動手段の足がいる。
「仕方ない。クルマで行くかぁ」
岐阜と横浜の実家までの距離は400Km。泊まってもいいが、前述の事情で実家には泊まれない。そうするとホテルを取ることになるが最近のホテルはやたら高い。コロナ前だとビジネスホテルが7~8000円で泊まれたが、今はその倍かそれ以上する。愛車のN-ONEは軽自動車なので、高速代は普通車にくらべれば少しは安いし、土日ならさらに3割引き。新幹線で行くよりは安く済むが、ガス代に高速代、宿泊費も合わせればかなりの出費だ。起業したばかりで収入もずいぶんと少なくなったので節約はしたい。
「日帰りでいいか。別に観光するわけじゃないし」
日帰りだと往復800Km。東京から青森までの距離と大体同じだ。
過去にもクルマであちこち出張して長距離運転は慣れているが、さすがに自分もそう若くないし、まして軽自動車に乗り換えてから1日300Kmを超えるような長距離は出かけたことはない。
「ゆっくり行けばいい。朝の早い時間に出かければ、クルマも少ないだろうから自分のペースで走れるし」と覚悟を決めた。
* * *
当日の朝、4時に起きて5時過ぎには家を出た。高速に乗る前にガソリンを入れ、吉野家で朝食を食らう。高速でもN-ONEは快調だ。ターボエンジンというのもあるが660ccで新東名で120Km巡航できるポテンシャルがあるのは驚きだ。最近の軽自動車は侮れない。
横浜に着くと、まずは父親を乗せて母親が眠る墓地へ行く。軽く掃除をして花を供える。母親はクリスチャンだったので、線香は焚かずに十字を切って目をつぶり、まあここ最近いろいろあったことなどを報告する。
父親と話がしたいと考えていたのは、もしもの時に備えて確認しておきたいことだ。もう90も見えてきたし、いくつか病気もあるようだ。
とは言え、まだ一人で歩けるし、多少耳は遠いがコミュニケーションも問題ない。もうタイミング的には今しかないだろう。
父親も分かっていたようで、「今後のことだけど・・・」と話を切り出した。
財産のこと。預金や不動産について。
今住んでいる家だけ。多少の預金と年金で暮らしていること。株や債権はすでに売ってしまったこと。財産を処分したあとの相続のことについては、遺言書を作成しておいてもらえばオヤジの意思に従うこと。
葬式のこと。誰に連絡して欲しいか。葬式はどうしたいか?
あまり人を呼ばなくていい。家族葬でいい。葬儀の後に親戚や会社関係の人に連絡して欲しい。それであれば連絡先をメモしておいて欲しいこと。
各種保険やサブスクなど、今契約しているものをリストアップして欲しいこと。
家財は、少しずつでいいので処分できるものは処分して欲しいこと。
とりあえず、今考えられるものを伝え、確認してもらい準備して欲しいこと。
不謹慎かもしれないが、父親も現実的に考えれば時間はそれほど多く残されていない。自分だってもうすぐ60歳。還暦だ。
自分は長男で、妹が2人いるが、その時が来れば自分がやらなければならないことも多いだろう。
祖父母や母親、親戚のおじさん、おばさんなど、見送ることも多くなってきた。一度、親類の税金や社会保険料未納で相続人になっていた自分に払えという問題に巻き込まれたこともある。
もうそんな歳なんだ。子どもたちが成長し自立していって、ホッとしたのもつかの間。その後にはこういう問題があるんだな。まだ介護問題が降りかかっていないだけマシかとも思う。
* * *
墓参りをして、食事して、その後喫茶店でコーヒーを飲み、実家まで父親を送り届ける。
帰り際、実家の近くに小学校の時からの友人が暮らしているので家の前までいくが、彼が普段仕事で使っているハイエースがなかったので、仕事か、若しくはトライアル競技に熱中している彼はバイク積んでトライアルのコンペにでも出かけているのだろう。当日どんなスケジュールになるかわからなかったので、事前に横浜に帰ることは連絡していなかったから仕方ない。
帰りの400Kmがあるので、他に寄ることもなく岐阜に向けて出発する。
そういえば、クルマで実家に帰るのってすごい久しぶりだ。普段は電車だから横浜でクルマを運転するのは久しぶりだ。もう30年近く離れている。街並みはだいぶ変わっていて、確かここに南海部品があったよな? なくなったか? とか、昔あった自転車屋が店を畳んでいたとか、ああこの店まだ営業しているだ、えーこんな店あったっけ? など、昔の記憶と照合しながらハンドルを握る。
横横道路から保土ケ谷パイパスを通って、横浜・町田ICから東名に乗り、名古屋方面の標識にしたがって本線に合流する。
帰りの高速は少し渋滞もあったが、N-ONEくんは快調に走り無事家までたどり着く。
たぶんだけど、これから実家へ往復することも増えていくんだろうな。みんな親の面倒を見て、そして相続の手続きやらなんやら問題を片づけているんだと思うと、よくやっているなと思う。
せめて、自分は早めに準備だけはしておこう。そう思う久しぶりの帰省だった。
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