少し前の話ですが。
10月のある日、東京の仕事仲間のTさんと電話で話していると
「今度、富山のMさんのところに仕事で行くことになってね。前日から入ってその日は富山を案内してくれるってことになったけど、ブルさんもどう?」
「いいね。富山だったらクルマで3時間もあればいけるから。行こうかな」
「じゃあ、Mさんにブルさんも行くって連絡しておくよ」
「了解。おねがい」
ちなみにMさんも長い付き合い。Tさんとともに共通の仕事仲間である。
* * *
富山には、仕事でもプライベートでも何度も行ったことがある。若いころは営業で富山県を担当していたので、月の半分は富山にいた。
ただ、仕事だと観光している暇はないし、プライベートでもバイクでツーリングで出かけることが多いので、あまり観光地をブラブラすることもなかった。
今回は岩瀬地区というところを案内してくれるらしい。そういえば一度も足を踏み入れたことのない地区だ。
岩瀬地区は富山港に面し、かつて北前船の港町として栄え、日本海交易の要衝として発展したという。
特に江戸時代から明治時代にかけて米や酒、海産物などが積み下ろされ、日本各地との交流が活発に行われ、当時の商人たちの豪邸や蔵が今も残り、歴史を感じさせる古い町並みや地域の文化に触れられる観光スポットが数多く点在している。
なるほど。楽しみだ。
富山駅で待ち合わせ。富山のMさんと落ち合って新幹線でやってくる東京のTさんを迎える。
3人で会うのは久しぶりだ。
* * *
Mさんの案内で富山駅から徒歩で還水公園へ向かう。だいたい15分ぐらいだ。
富山湾に流れ込む神通川に沿うように運河が作られている。そのドンツキが公園として整備され、市民の憩いの場となっている。
公園内のスターバックス。ここはスターバックスの社内コンテスト「ストアデザインアワード」で最優秀賞を受賞したことから「世界一美しいスタバ」と言われている。確かに、このテラスで景色を眺めながらコーヒーをいただくのは気持ちがいいだろう。
ただ、当日は休日とあって長い列ができていたので、外観だけ眺めておわり(笑) 特にメニューは他の店と変わらないみたい。
ここからは、富岩水上ラインという船に乗って運河を下り岩瀬地区まで行くという。Mさんが前もってチケットを取っておいてくれた。
ぶらぶらと公園を散歩しながら船の着く桟橋まで歩いて行く。この日は天気もよく10月にしては暑いぐらいだった。
船に乗るって、この歳になってもなんだかわくわくするだよね。定員55名の船はほぼ満席。なかなか人気らしい。だから前もってチケット取ってくれたのか。
感謝。
いよいよ出航。
地図で見ると細く見える運河だが、船から見る景色はそこまで狭くは感じない。
外海とは無縁で、運河ゆえ流れもなく、ゆったりゆっくりと船は進む。
しばらく進むと、堰のようなものが見えてくる。
これは中島閘門(こうもん)と呼ばれる。国の重要文化財にも指定されている施設だ。
富岩(ふがん)運河の建設にあわせて建造され、平成10年には昭和の土木建造物としては全国で初めて「国重要文化財」に指定されました。
上流側(富岩運河環水公園)と下流側(岩瀬側)の水位差(国内最大級)を調節するパナマ運河方式の閘門。閘室内に船が入ると前後の門扉が閉じ、水位がどんどん変化する「水のエレベーター」を体験しながら通航できます。
ざっくりいえば、パナマ運河のミニチュア版だ(ざっくり過ぎるだろ💢)
閘門の中に船が入ると、前後の門が閉じられて、下流に行くには水位を下げて門の向こう側と水位を合わせて出ていく仕組みだ。高低差はなんと2.5Mもある。
だんだんと船が下がっていくのはなんだかおもしろい。そして門が開く瞬間!
これは興味深い体験だった。
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船は1時間ほどかけて岩瀬カナル会館にたどり着く。
岩瀬の船着き場で、Mさんと同僚のAさんと合流。Aさんは岩瀬地区の住人だ。ここからAさんが案内してくれる。Aさんとも一緒に仕事をしている仕事仲間だ。
ちょっとした路地にも歴史を感じる。
最初に案内してくれたのは、昔の豪商の住宅「旧馬場家住宅」だ。
もちろん、その歴史的な価値や建築物、調度品に興味がないわけではないか・・・
目的はこれ ↓
クラフトビールだよ!
旧馬場家の蔵を改装したパブがあり、ここでしか飲めないビールを味わうことができる。
4種類の飲み比べセットを注文。フルーティーなビールからコクのある黒ビールまでを一度に楽しめることができる。
やっぱり、スーパードライとは違うねー(当たり前か)。
ちょっとほろ酔い加減で次の目的地へ向かう。
途中、可愛らしい3輪車が。ミゼットかな? 古い街並みによく似合う。まるでタイムスリップしたようだ。
そして着いたのがこちら。
岩瀬地区には、いくつかの酒蔵があって、試飲ができる。この桝田酒造店は15分1000円で好きなだけいろいろな種類の日本酒を試飲することができる飲兵衛に挑発的なシステムがある。
大吟醸から古酒まで、1本1万円もするボトルも飲み放題。
冷蔵ケースにずらっと並んだ日本酒を一升瓶ごとカウンターまで持ってきて、渡されたおちょこに注いでグビッと飲み干す。
日本酒って、本当に奥が深いというか、それぞれ味がまったく違う。フルーティーなワインのような飲み口から、ビリッとした辛口、まろやかな古酒まで、本当にさまざまな味がある。
ただ15分とは言え、おちょこに10杯ぐらいは飲むことができる。
大変おいしゅうございました。飲んだ飲んだ。
さっきビール飲んだばかりだし、ハイペースで日本酒を飲んだので、お店を出る頃には足下がおぼつかない💦
そして、本日のメインイベントの会場へ移動。
このとき、「GO FOR KOGEI 2024」という現代アート展が町をあげて行われていた。
壁には「愛」の文字。
実は、「愛」の文字の前でおっさん3人手でハートをつくって記念撮影したのだが(もうみんなかなり酔ってる💦)、あまりにもキモいのでカットです。。。。
* * *
本日の宴会場は、老舗料亭の「松月」さん。
富山市岩瀬港町にある、明治44(1911)創業の料亭。土壁と黒瓦の建物は創業当時の姿をとどめ、老舗の風格が感じられる。夏の名物の白エビ料理には、刺し身やから揚げ・吸い物・オリジナルの福団子などがある。7000円以上のコースにつく福団子は、1個で200匹ものエビを使って作られる。丁寧に皮をむき、身を包丁で叩いて片葉粉と塩を混ぜて団子にし、炭火で焼く。味はもっちりとしていながら、軽くて香ばしい。
Mさんは、ここで結納したと言っていた。そのくらい富山では格式のあるお店だという。
玄関を入ると、古いが綺麗に磨かれた梁や階段の手すり。凜とした空気が漂う。
料理は、富山湾で採れた海鮮が上品な味付けで出される。
もちろん、名物の白エビ。
甘く濃厚なエビの味が口の中で広がる。
お刺身を盛った器も美しい。
こちらが、白エビ200匹をつかった団子。少し香ばしくおいしい以外の言葉が見つからない。
このほかにも白エビの天ぷらやカニの甲羅揚げなど、品数も多い。
最後に椀から飛び出る鯛の半身とお餅が入った大名椀。豪快。お腹いっぱい。もう他に何もいりません💦
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帰りは路面電車で富山駅まで戻る。最近、富山はニュートラムを導入したまちづくりで有名になった。
ただ、岩瀬地区へつながる富山港線は、昭和の初めに開通し、2006年まではJRが運営していたらしい。
東岩瀬駅で電車を待つ。
夜の闇に浮かび上がる駅舎は昔のままで非常にレトロだ。この風景だけで、なぜだか郷愁を誘う。
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富山には定宿にしているホテルがある。「コンセプトホテル 和休」という。
富山駅から徒歩5分ぐらい。なんと部屋は和室で背の低いベッドが備え付けられている。素足でくつろげるのがいい。
そして、ビジネスホテルには珍しい大浴場と、なんとサウナまである。
しかし、これだけではない。
朝食がめちゃめちゃおいしいのだ。
富山県産のごはんに具だくさんのみそ汁。そして分厚い鮭の塩焼きにこれでもかというほど小鉢が並ぶ。普段の晩飯より豪華でバランスもいい(笑)
朝からおかわり必須だ。
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岩瀬まちめぐりの翌日は、しっかりお仕事。富山のお客さんに営業兼あいさつ回りをして、帰路に着く。
途中、「ゴーゴーカレー」の看板に惹かれて吸い寄せられる(爆)巷でいう金沢カレーだ(食べたのは富山だけど)。
もちろんオーダーはカツカレーだ。うーん(。_。) 写真を見返すだけで、また食べたくなる。クセになるな。ゴーゴーカレー。前日が豪華な食事だったからこそ、こういう庶民の味にホッとする。
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最近、インバウンドの影響で有名な観光地はどこも混雑しているが、岩瀬地区はそれほど観光客も多くなく、風情ある街並みをゆっくり眺めながら散策して、おいしいお酒と料理がいただける、かなり満足度が高い街だった。静かにのんびり観光したい人にはお勧めだ。
ぜひ、富山を訪れた際には、少し足を伸ばしてみてはいかがでしょう?
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散歩しながら、移動時間にAudibleで本を「聴く」のにハマってます。