トライアンフ・ボンネビルT120が自分の手元に来て3年が経った。特別仕様車のバドイーキンス・スペシャルエディション。つい最近納車したような気がするが、もう3年。年取ると1年が早くなるって言うけど、本当に実感する。
16歳で二輪の免許を取って、約40年バイクに乗り続けてきた(30代は仕事と子育てでほとんど乗れてないけど・・・)。
この間、原付から大型まで、2スト、4スト、4気筒のガンガン回すタイプから、オフロード、単気筒のトコトコ走るバイクまで様々なバイクに乗り継いできた。どのバイクも個性があって楽しかった。
ただ、もう4気筒のぶん回すタイプのバイクは段々しんどくなってきたので、ボンネビルの前にSR400を買った。初めての4ストビッグシングル。これがよかった。トコトコとのんびり走るタイプが今の自分にぴったりだと言うことがわかった。限定の黄色いストロボカラーのSRは見た目も気に入っていた。
しかし、なにせSRはパワーがない。初めからわかってはいたが高速道路では振動との闘いだし、追い越しは十分に加速する距離が必要なのでタイミングも難しい。結構命がけ。やっぱり大型バイクがいい。段々気持ちが傾いていく。
そして、もう最後と思いたどり着いた英国のトラディショナルなバイク。
バーチカルツインのトライアンフ・ボンネビルT120だ。
最初に感じたのは「大人のバイク」だ。イギリスの紳士が乗るようなイメージ。小僧には似合わない。ようやく自分もこんなバイクが似合う歳になった。
The Motorcycleと言わんばかりのスタイル。一つひとつのパーツの作りが凝っていて、こだわり抜いている。水冷なのに空冷のようなフィンのあるバーチカルツインのエンジン。マフラー取付のフランジ。キャブのような見た目のインジェクター。各所にスチールのメッキパーツが使われ見た目に美しく、所有感を満たしてくれる。
そして、バーチカルツインの270°クランクのエンジンの鼓動・・・
控えめに言ってもいいバイクだ。旧車スタイルだけど、中身は最新。キャブがご機嫌斜めとか、点火タイミングだとか、寒い日にエンジンかからないとか、そんなことは一切ないので乗っていて不安がないのがいい。でも、見た目は旧車(笑)。面倒くさがり屋のおじさんにとっては最高のバイクだ。
それに、今どき国産じゃこんな見た目にコストをかけるバイクは作れないだろう。3年前当時156万円(乗り出しだと180万円ぐらい)が高いか安いかは人それぞれ感じ方は違うだろうけど、自分にしてみれば、バーゲンプライスだ。そのぐらいの価値を感じさせてくれるバイクだ。
* * *
ボンネビルT120の試乗記事や動画は多くあるが、それは一過性で表面的だ。そこで3年という区切りもいいので、ここで3年所有して乗ってボンネビルT120のレビューをまとめてみたい。
1.ポジション・取り回し
2020年式のボンネビルT120の重量は244Kg。まあまあ重い。ただ、重心が低いのか、サイドスタンドからの引き起こしは、「よっこらしょ!」と気合いを入れるほどでもない。大型の1200ccと考えれば、それほど車格も大きくもないし、シート高は790mmでステップは少し前にあって、まっすぐ下に下ろせるので、足つきに不安はない。男性だったらそれほど重量や足つきを気にすることはないだろう。ただ、自分の場合サスペンションをYSSに変更しているので、少しシート高が高くなってしまって、167cmの自分では両足べったりとはいかない。
駐車場では、(慣れてしまえば)跨がったままバイクを後ろに下げて、Uターンしてそのまま走り出せる感じの取り回しだ。ハンドルの切れ角が広いおかげもある。
インスタなどのSNSでボンネビルT120に乗っている女性も多く見かけるので、大型バイクとしては、比較的小柄な人でも扱えるんじゃないかと思う。
ポジションは、とにかく体に負担のないポジション。平均的な日本人男性がまたがってみても、ハンドルの高さ、幅、ステップの位置など、手を出して、足を下ろしたいところにハンドルグリップとステップがある。手や腰、ヒザなど、無理がかかるようなところがなく、自然体なポジションと言っていい。
そして、なによりシートがいい。座面が広く、柔らかいので、お尻も痛くなりにくい。ただ、ポジション的に比較的上体が立っているのでお尻に体重がかかるのか、長時間(2~3時間)ぶっ続けで乗ればジワジワお尻が痛くなる。逆にいえばそのくらいの時間休憩無しでぶっ続けで乗り続けられるということだ。
これは大事だ。特に50代以上で、だんだん体が硬くなってきたライダーにとって、スポーツバイク(SS)のような前傾でステップが後ろにあるようなバイクだと、10分も走れば拷問と言っていいぐらい辛い。体が悲鳴を上げる。そうすると乗る機会や距離が段々短くなるって話はよく聞く。少し前にMVアグスタのブルターレ乗っていたが、ポジションはSSほどではないにしてもまさしくそのパターンだった。
速くてカッコイイバイクに惹かれるのはよくわかる。自分もときどきそういうバイクに乗りたくなる。でも、長くは乗れずに、まあ3年経ったら手放している確率90%だろうな。その時の感想は ↓ こちら。
2.走行性能
乗り味は「トルクで走る」と言っていい。1200ccのツインエンジンは3500回転で最大トルク105Nmを発生する。
TRIUMPH Bonneville T120
最高出力 80ps(59kW)/6,550rpm
最大トルク 105Nm/3,500rpm
低回転から盛り上がってくるようなトルク感でバイクを押し出す、という表現がピッタリくる加速と270°クランク特有の鼓動感がボンネビルの魅力だ。
6500回転ぐらいでパワーは頭打ちになるが、むしろ2000~3000回転ぐらいの間でシフトアップして行く感じがいい。街中だと使うのは4速ぐらいまで。流れのよいバイパスでも5速までで走ることが多い。その辺りが一番エンジン鼓動が気持ちよく、トルクが出やすい回転域なので、アクセル操作だけで巡航できる。
ミッションは6速まであるので高速ではそれほど回転数を上げずに巡航することはできる。ただ、基本ネイキッドなので風はまともに受ける。オプションの小さなスクリーンを付いているが、心地よく走れるのは100Kmぐらいまで。新東名の120Km区間をマックスのスピードで巡航するのはちょっと辛い。できないことはないが、そういうバイクでもないし。
やったことはないが、最高速はメーター読みで180Kmぐらいはいけると思う。トルクがあるので加速はいい。ビッグバイクのアクセルを少しワイドに開けたときの「ドンッ!」という加速感は十分味わえる。高速の合流でも加速車線で制限速度に軽く到達するぐらいの加速をする。
これは900ccのT100にはない魅力だ。
なお、クイックシフターやスリッパークラッチ、トラコン、6軸センサーなど、いわゆる最新のテクノロジーはほぼ登載されていない。走行モードはロードとレインの2つのモードがあるが、レインモードはアクセル開度と出力の感覚的がずれて、むしろ乗りにくくなるので、どんなシチュエーションでもロードモードで走っている。
クラッチは、1200ccのバイクにしては軽い方だと思う。300Kmぐらいのツーリングでもクラッチを切るのが厳しくなるようなことはない。シフトフィーリングはカッチリしていて、全体的に昔のアナログなバイクを乗っている、機械を操作している、といったフィーリングである。そういう意味では、スタイルも含めて昔から乗っているおじさんには馴染みやすいバイクといえる。
ネガティブな部分では、ノーマル前後サスペンションがお世辞にもいいとは言えない。調整機能もなく、ストローク感がなくて減衰があまり効いている感じがしない。できればサスは何とかしたい。加えて、ブレーキもあまり効きがよくない。速く走るバイクでもないでの、その辺りは後回しにされてコストを削った感じだ。
3.積載性・ツーリング
車両本体にはモノを収納するようなスペースはない。ETCがシートの下にギリギリ取り付けられるぐらいである。
ただし、フラットなリアシートには様々ある汎用のシートバッグが取り付けられるし、この手のバイクにはサイドバッグもよく似合う。
自分は最初からオプションでGIVIのリアボックスを取り付けるキャリアを装着した。ボックスは手持ちのものを取り付けていたが、周りからあまりにもかっこ悪いと不評で、下の記事にある25Lのアルミのケースに変更した。
さらに、キジマのサイドバッグサポートとヘンリービギンズの18Lのサイドバッグも取り付けた。
これで泊まりがけのツーリングでも十分対応できる。さらにリアボックスの上にちょうど取り付けられるようなソフト・クラーボックスを見つけたので、食材や冷たい飲物も持ち運べるようになった。
これはなかなか便利だ。ただVASTLANDのソフトクーラーボックスは人気みたいで、今は欠品中のようだ。いいなと思われた方は再販されたら即買したほうがいい。
1泊2日のツーリングはこんな感じ。サイドバッグはお土産用のスペースで行きはほぼ空だ。
↑ 防水バッグをリアボックスの上に取り付けるような変速的な積み方。シートを外してETCのカードの出し入れするときにいちいちバッグを外さなくてもいいし、着替えなどを防水バッグに入れて宿に着いたらこのバッグだけ取り外して持ち込めばいいので便利。ちなみに、これでもちゃんとボックスのふたは開く。
いずれにしても、オーソドックスなスタイルだからこそ、いろいろなバッグや荷物の積み方をしてもそれなりにまとまるのがボンネビルだ。
ちなみに燃費は大体リッター24Km前後。タンクは14リットルなので満タンで300Kmは走れる計算だが、ツーリングの際は250Kmを目安に給油している。
4.メンテナンス・ランニングコスト
3年間の走行距離は約1万5000㎞。1年で5000㎞ぐらいの走行距離だ。メンテナンスは購入時に初回(1000Km)、12か月、24か月、36か月のメンテナンスパック(約10万円)に加入したので、点検ごとのオイルやオイルフィルター交換、24か月ではブレーキフルードの交換まで含まれているのでお店でやってもらっている。
日常のメンテナンスと言えば、洗車とチェーンの注油など、基本的なことだけだ。ただ、オイル交換は6か月ごとに行っているので、半年に1回は自分で交換している。多分、ディーラーにお願いすると軽く諭吉さんが飛んでいく💦 自分でやればアマゾンで3~4000円でオイル買えるので(指定オイルはpower1racingだけど、その下のグレードでも十分)、最初に道具さえそろえてしまえばだいぶ安くできる。
タイヤは8500㎞で1度交換した。納車時の標準タイヤはピレリーのフォントムだが、交換したタイヤは、ダンロップのTT100GP。このタイヤはクラシックなバイクによく似合うパターンで、値段もお手頃だ。詳しいことは下の記事を参照して欲しい。
ライコランドや2りんかんなどの量販店で交換すると、外車は工賃が高くなると言う謎のシステムがある。それに、交換してもらった後になんだか引きずるような感覚があって点検時にディーラーで見てもらったら、リアのシャフトが真っ直ぐ入っていなかった。ちょっと不安だったんだよな。交換したの見習いの整備士みたいだったから。
やっぱり少し割高でも、タイヤやパーツの交換はディーラーにお願いした方がよさそうだ。
3年目の点検では、オイルとフィルター交換のほか、エアクリーナー、プラグ、ラジエターのクーラントの交換まで含まれるが、これが部品代のみ含まれていて、点検代と工賃は別という「ちょっと待てよ!」という注意書きが・・・
36か月点検では、フロントのブレーキパッドとグリップも交換したので、約6万円の費用がかかった(特別仕様の白いグリップは汚れが目立つ・・・)。
それでも、メンテナンスパックはお得だと思う。
車検はディーラーに頼むとプラス5万かかるうえに、3週間ぐらい預かりというので、自賠責だけディーラーで更新して、はじめてユーザー車検で通した。費用は検査代と重量税、光軸だけテスター屋で調整してもらって全部で約6500円。ちなみにディーラーで支払った6万円の中には自賠責24か月分(8760円)も含まれている。
車両がノーマルなので検査も案外あっさり通ったので、次からはディーラーで点検だけしてもらってユーザー車検で通そうと思う。
トータルすると、3年間でメンテナンス費用は大体25万円ぐらい。これに任意保険が年間3万円(最大割引適用)と税金年6000円。国産の大型でもそのぐらいはかかると思うので、特にボンネビルのような外車だから高いという訳でもない気がする。
ちなみに、今のところエンジンや電気系などのトラブルは一切ない。そういう部分でのクオリティは国産と変わらないように思う。
5.カスタム
基本的に大きくスタイルを変えたり、エンジンをいじるようなカスタムはしていない。自分の中では、ノーマルでほぼ自分の好みに完成されているから、あまりイジる必要性を感じていない。
エンジンガードやチェーンカバー、ブレーキ&クラッチレバー、バックミラーなどより好みのパーツに替えているぐらいだ。
大きなものとしては、アローのスリップオンマフラー(未使用品)がアップガレージで出ていたので思わず買ってしまったが、ディーラーに点検出すときにマフラーがノーマルか認定マフラーしか受け付けてくれないので、一度交換したがノーマルに戻してそのままになっている。ちなみに社外品で認定受けているマフラーはほぼない。カスタムパーツは海外からの輸入品に頼るしかない。
アローのスリップオンは、ノーマルに比べてかなり軽量なので乗り味も軽く、音量はノーマルよりやや低音が響く感じだった。気が向いたらまた付け替えるかもしれない。
あとは、ふるさと納税で、なんとゼロポイントシャフトが返礼品になっていたので、寄付をしていただいた。
リアサスペンションは、SRに装着していたYSSのZ366をボンネビル用にエンドアイで長さを調整し直して替えている。
6.まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございます。
もし、ボンネビルT120の購入を検討していたり、興味のある方の参考になれば幸いである。オーナーだからちょっとひいき目のレビューになるが、それを差し引いてもいいバイクだと思う。
ボンネビルの魅力は、バイクそのものに加えて、歴史とか伝統、パーツ一つひとつこだわりも含めて、オーナーの所有感を満たしてくれる。これはオーナーになった多くの人が感じることであろう。
ただし、これは私個人の感想ですべての人に当てはまるものではないことを断っておきたい。バイクの好みは人それぞれで、フルカウルのスポーツタイプが好きな人もいれば、クルーザーやオフロードなど、自分の好みに合った車種を選択すればいいだけの話である。
ただ、モダン・クラシックなタイプが好みで、乗ってみたいとか、購入を考えている人には、ぜひ、そのリストにボンネビルシリーズを加えていただきたい。
ちなみに、この分野にはモトグッチ、BMW、ロイヤルエンフィールド、カワサキWシリーズやZ900RS、ホンダGB、ヤマハSR(生産終了)など、他にも魅力的なメーカーやモデルがある。
個人的には、BMWのフラットツインは一度所有してみたい欲があるが、そんなことを言い出したら切りがないので、見て見ぬふりをしている(笑)
グループ参加しています。
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