雪山に登りだしたのは2年前
本格的に登山をはじめてもうすぐ丸6年になるが、雪山にチャレンジしたのは2年前の伊吹山がはじめて。伊吹山は岐阜県と滋賀県にまたがり、新幹線で岐阜羽島と米原の間に車窓から望むことができる百名山の山だ。
標高こそ1377メートルとそれほど高くはないが、地理的に雪が降りやすく、山頂付近は数メートルの積雪がある。ただ、冬でも多くの人が登っているのでルートは明瞭だし、岩稜帯など危険な箇所もないので雪山としては登りやすい。
そして、次の年には北アルプスの西穂独標(2701メートル)に登った。北アルプスで唯一通年営業している西穂山荘があり、ロープウェイで2000メートルまでアプローチできるので、森林限界を超える本格的な雪山をはじめるにはちょうどいい。
ただし、雪山のフル装備(冬靴にアイゼン・ピッケル等)は必須、独標手前には岩稜地帯もある。夏の3000メーター級の山を登った経験ぐらいの技術や体力は求められる。
西穂高岳のピークは、独標の更に奥にあり、険しい尾根を歩かなければたどり着けない。夏でも上級者向けで、冬季はさらに難しくなる。
そもそも、なんで雪山なんて危険で厳しいところにわざわざ登ろうと思ったのだろう?
スポンサーリンク
雪山に誘われる感情とは?
趣味でスキーをしていたので、雪山自体は比較的馴染みがある。ただし、整備されたゲレンデを滑るスキーと雪山登山は、まったく世界が違う。
ゲレンデは、基本的に安全が確保されている。コースを外れなければ遭難することもないし、吹雪けばゲレンデハウスに逃げ込めばいい。
一方登山は、基本的に身の安全の確保は自分自身で行わなければならない。特に積雪期、厳冬期の山は、ふつう人間が生存できる環境ではないから、なおさら装備も技術も体力も入念な準備が要る。初級者は経験者と一緒でなければ山に入らない方がいい。
そんな、厳しいところに、なんでわざわざ?
それは、おれがMだからだ(爆)
まあ、そうなんだけど (^_^;)
それは置いておいて、登山を趣味にしはじめたときから、どうもより高く、より長くという思いが強くなる。過酷になればなるほど、達成感があって、自信にも繋がる。もちろん山の景色は美しい。苦しい登りの先に、自分の目で、肌で、直接感じる自然の厳しさと美しさ。
「オレは生きてる!」
こんな気持ちになる。山に入ると、肉体的にも精神的にも自分が解放され、充実感があるのだよ。
そして、厳冬期の雪山に行き着くわけだ。
病気ですね。
八ヶ岳「赤岳」までの道のり
長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳は、あまりにも有名だから説明は要らないと思うが、念のためwikiのアドレス貼っときます。
八ヶ岳は関東からのアクセスがよく、日帰りから泊まりの縦走までいろいろな登山が楽しめる人気の山域。
ただ、岐阜から行こうと思うと、中央道で南アルプスをぐるっと迂回しなければならず、距離もあって時間も金もかかる。だから、これまであまり行くことはなかったんだけど、積雪期に登れる山域は限られていて、初級者の自分がアタックできるのは、アプローチがよく、山小屋が営業している八ヶ岳か北アルプスの西穂ぐらいしかない。
というわけで、山の師匠に相談して、2月9日~10日の1泊2日で八ヶ岳の赤岳に登ってきた。赤岳は八ヶ岳連峰の最高峰で標高は2899M。
山の師匠というのは、取引先の人なんだけど、学生時代から山に入り浸りで経験豊富。3000メーター超える山やテント泊の縦走など、まずは師匠に同行してもらって基本を教わってから、単独行にチャレンジしたりしている。
伊吹山も西穂独標も、もちろん師匠と同行した。今回も師匠と一緒だ。
ただ、この人教え方雑だし、一人でさっさと行っちゃうし、後ろを振り向きもしない。まあ、それでも登山に関しては、彼に頼るしかないので文句は言えないのだが・・・
今回の山行は、この師匠がプランニングしてくれた。まず、初日は美濃戸登山口から赤岳山荘→北沢→赤岳鉱泉の山小屋まで行って泊まり。翌日、行者小屋→文三郎道→赤岳→文三郎道→南沢→美濃戸登山口というルート。
と、いうわけで、朝5時に師匠があたしの自宅に来て、CX-3に乗り換えて東海環状道→中央道をひたすら走り、諏訪南インターで下りて美濃戸登山口をめざす。インターからはそれほど距離もなく、途中積雪もありません。
9時少し前に到着。美濃戸口の八ヶ岳山荘の管理する駐車場に止める。そこそこクルマが止まっていて、やはり八ヶ岳は人気ありますね。
ここで登山届けを出します。
赤岳山荘まで林道を1時間歩く。クルマも入ることはできるのですが、路面はつるつるで、4WDでもチェーン装着じゃないと厳しい感じ。CX-3にスタッドレスでも行けなくはなさそうですが、ぶつけたり、落ちたりしたくないので、素直に歩く。
デリカだったら行けそう。途中何台かデリカがノーチェーンで行ってた。
途中の赤岳山荘を過ぎ、さらにしばらく林道を行くとやっと登山道に入る。林道歩きは精神的にやられる。つまんないんだよね~
登山道はとても緩やかな沢沿いを歩く。岐阜の山は急登ばかりなので、八ヶ岳のアプローチはハイキング気分♪ 踏み跡もしっかりしていて、あまり雪も深くなく歩きやすい。気温はマイナスなんだけど、歩いているうちに暑くて、ジャケット脱いでフリースだけでちょうどいいぐらい。
3時間ほどで、赤岳鉱泉に到着。そこそこの積雪。
赤岳鉱泉といえば、名物が2つ。一つは上の写真の「アイスキャンディ」。鉄パイプで組んだ骨組みに水を掛けて凍らしてあり、アイスクライミングが体験できる。
ちょっと楽しそうだけど・・・ 基本高いところ苦手だし(;´Д`)
そして、もう一つが木のぬくもりを感じられるモダンな食堂でいただく夕食。なんとステーキが出るらしい。
この日は、残念ながらステーキではなかったが、鯛?のような魚と豚しゃぶ。売店で売っている信州ワインを買って、なんとも豪華なディナーだ。
ここからさらに、ビール・焼酎・・・
この日は、昼から雪が降り、風もそこそこあった。明日はどうだろう? 関東地方に寒波が来てるらしい。問題なのは雪より風だ。風が吹くと体力も体温も奪われる。
行けるところまで行って、天候次第で途中引き返して下山しようと話す。無理は禁物だ。ただ、師匠のことだから、よっぽどのことかない限り引き返さないだろうな。。。
さて、翌日。
なんと快晴じゃないの!
ただ軽い二日酔いなのか、少々頭痛い (;´Д`)
赤池鉱泉から行者小屋までは30分程度。ここが、赤岳登山のベース基地になるらしい。この寒いのに、テントの数が半端ない!
みんな好きね。
行者小屋を出ると、いよいよ本格的な登山道に入る。文三郎道は直登でかなり傾斜もきつい。重い冬用の登山靴にアイゼンを付け、この傾斜を登るのだ。
一歩がキツイ! (>_<)
ゾクゾクと登山者が登ってくる。3連休の中日だからね。
阿弥陀岳が太陽に照らされ白く光る。この景色なんだよね~
文三郎道の尾根に出る。森林限界を超えた。ここで風が少し強くなる。手先や頬がみるみる冷たくなるのがわかる。ゴーグルをして、バラクラバ(ニットの目指し帽みたいなやつ)を口元まであげる。
ただ、口元を塞ぐとただでさえ標高が高く酸素が薄いのに、更に息苦しくなる。
まだまだキツイ登りが続く。
山頂間際は雪と氷と岩の難しいコースになる。幸い風は穏やかだ。
でも・・・
マジ? これ行くの? こんなん聞いてないけど?
師匠は「そうだった? まあ、もうすぐ頂上だからがんばってね。しっかりアイゼン効かしてね。山側にピッケルさして。それからアイゼン岩に引っかけないように。コケたら終わりだから」
はあ?????
おいおい。これ初級者が行っていいの?
それでも、ここまで来たら腹を決めて行くしかない。
基本の3点支持で慎重に足場を選びながら一歩一歩。
そして。ついに!
登頂です! 赤岳2899メーター!
快晴です!
中央アルプスの峰々
ああ富士山が・・・
10分ぐらい山頂で過ごし下山。
実は下りの方が難しいんだよね。さらに慎重に足場を確認しながら下って
ようやく、岩稜地帯を抜ける。今回積雪は少なくワカンは必要なかったな。
ああ、振り返れば「赤岳」。あんなところのてっぺんにいたなんて信じられない。
行者小屋から南沢の森のルートを歩く。ここは気持ちいい道だ。歩いていればそれほど寒くなく、締まった雪の上は夏道より歩きやすい。
沢は完全に凍っていて、この上を歩く。
赤岳山荘から、また林道歩き。ここまでで7時間ほどの行動時間。無事14時に美濃戸口に帰還する。
スポンサーリンク
赤岳は十分雪山を経験してから臨むべし
八ヶ岳は、雪山登山の入門としてよく言われる。八ヶ岳はさまざまな登山ルートがあり、初心者も楽しめるスノートレッキングコースから、今回の赤岳のような本格的な雪山ルートもある。
アプローチしやすく、山小屋も充実し、人もそれなりに歩いているので、確かに雪山をはじめるにはいい環境だと思う。
ただね。
赤岳は初心者は無理だからね。これは断言する。今回は天候にも恵まれたけど、ひとたび荒れれば簡単に遭難するレベル。いろんなガイドブックでも、赤岳は上級者向けと書いてある。
今回、自分が登ってみて、まだまだ技術的に足りない部分が多く、課題も少なくないと悟った。夏山はそれなりに経験あるけど、重たい装備は体力的にもきついし、使い方もまだマスターしているとは言えない。
今回、師匠がいたから何とか(無理矢理?)登れたけど、間違っても単独では登れない。十分経験を積んでからチャレンジする山。
ちなみに初級者と初心者は違う。初心者は全くのシロートで、初級者は一応装備を揃えて経験はあるが、まだ十分に経験を積んでいない人という意味。
今回の赤岳で、自分は本格的な雪山登山のスタートラインに立てた気がする。次のステップに進めるよう、これからも気を引き締めて楽しもう。